薬用植物園

季節の花

ヒシ 2018.09

2018090101.jpg(平成30年9月14日撮影)

学名: Trapa japonica Flerow
科名: ミソハギ科 Lythraceae
別名: イボビシ,アカモンビシ
英名: Water caltrop
中国名: 丘角菱
生薬名:

菱実 (リョウジツ)  使用部位:果実

 日本含む東アジアに分布する一年生の水生植物です。国内全土の沼や池に自生しています。葉は水面に浮くひし形の水上葉を放射状に広げて水面に広がります。一見茎から輪生状に広がるように見えますが、よく見ると互生なのがわかります。葉柄の途中には膨らみがあり、中身がスポンジ状になっていて空気を蓄えて浮く役割を担っています。花は当園では6~9月まで咲き、1cmくらいの小さな白い花を水上にだします。花が終わると水中に潜り結実します。ヒシの果実は扇子のような形をしていて、両端に鋭い棘を持っているのが特徴(菱形)です。

 食用として、9~11月の間に膨らんだ果実を収穫してその種子を食べます。デンプンを多く含んでおり、食べるとクリに似た味がするそうです。ヒシの食用としての歴史は古く、717年には長屋王邸に納められていたとされています。現在でもヒシの栽培は佐賀県神埼市で盛んに行われており、神埼菱焼酎などが作られています。

 その他にもヒシと言えば忍者の使う道具「撒菱」に使用されたという話が有名です。{正確には棘が多い同属の、オニビシ(Trapa natans L.)とヒメビシ(Trapa incisa Siebold et Zucc.)}忍者が逃走する際にばら撒いたり、潜伏する際の非常食にしたりしていたようですが、実際にそのように使用されたという記録はないそうです。

 薬用として、滋養強壮、解熱などの作用があり、果実を使用します。漢方処方では用いられませんが、民間的に滋養強壮、止痛、解毒などの目的で、種子が生食、または茹でて食べられてきました。



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(平成30年9月14日撮影:果実、膨らんだ葉柄)

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