薬用植物園

季節の花

オニバス 2016.07

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学名: Euryale ferox Salisb.
科名: スイレン科 Nymphaeaceae
別名: ミズブキ
英名: Gorgon plant, Prickly water lily

 日本、台湾、中国、インドなどに自生する1年草で、水面に浮かぶ棘のある大きな葉(直径1m以上のものもある)が特徴です。昔は各所で自生しているのが見られていましたが、池沼の改修、河川改修、埋め立て、その棘のため嫌われて駆除の対象になるなどの影響で個体数はかなり減り、環境省レッドデータブック、および各都道府県で絶滅危惧植物とされています。熊本県も例外ではなく、絶滅寸前とランクされています。さらに熊本県の条例で「指定希少野生動植物」に指定されており、採取などした場合最大罰金100万円が課せらると規定されています。

 和名が似ている別属植物のオオオニバス(Victoria amazonica) というより大型の水上葉を出す植物が知られていますが、その葉は子供が乗ることができるほど大きくなります。オニバスの大きな個体は、葉がオオオニバスのように大きくなることがありますが、棘があり薄っぺらいので乗ることはできません。

 花は水中で開かないまま自家受粉する閉鎖花と、水上で開花し他花受粉する花の二種類があります。他花受粉する花は、しばしば葉を突き破って出ることがり、朝に花を開かせて夜に閉じます。写真の花は朝10時頃に撮りました。種子にはでんぷんが多く含まれ、芡実米(ケンジツマイ)や鶏頭米(チョウトウマイ)という料理で食用にされ、中国では栽培が行われています。

 薬用では、種子を生薬名「芡実(ケンジツ)」と呼び消化機能の正常化、下痢止め、頻尿や夜尿の改善などの効果があります。ハスの果実である蓮肉(レンニク)と同じく、滋養強壮作用に優れています。

 数十年前、熊本市内のある地方では水田地帯の水路に自生するオニバスの実を拾い、子供のおやつ代わりに火で煎って食べたという話も聞いたことがあります。

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