研究・教育紹介 RESEARCH

機器分析学

機器分析学

自然と化学に分析技術を融合して、新たな化合物をみつけだす!つくりだす!

自然のちからを利用した機能性成分の探索

 植物や微生物は、われわれの想像を超える分子をいとも簡単に合成し、驚くべき生物活性を示すことがよくあり、長年にわたり薬学研究者を魅了してきました。最近では、医薬品以外にも、ひとびとの健康維持に役立つ機能性成分としての価値も注目されています。わたしたちの研究室では、自然の力を借りて新しい生物活性や機能をもたらす化合物や成分の探索およびそれらの合成を行っています。特に、最先端の機器分析技術を駆使して、それらの機能性に関する科学的根拠となるデータを収集し、迅速な成分同定を行っています。
このほかにも、伝統的な薬用植物に含まれる機能性成分を明らかにすることも行っています。『○○は体に良い』という話を聞きますが、なぜ体に効くのか、どのような化合物が作用を示しているのか、意外にもわかっていないことが多くあります。わたしたちは、薬用植物や生薬成分を抽出し、どのような化合物がどれくらいの量含まれているか、調査しています。こちらは、昔ながらの成分探索研究ですが、高度な機器分析技術を使用することで、これまで見過ごされていた微量成分さえも検出できるようになっています。

医薬品候補物質を最先端の機器分析技術で見つける

 これまでの天然物探索は、植物や微生物から生物活性物質を抽出することから始まり、それらの単離、構造決定、活性評価などの一連の操作を経て、実施されてきました。一方、機器分析の技術革新は日進月歩であり、高度なシステム化により、複数の化合物が混合した微量成分から迅速な構造推定をも可能にします。その結果、これまで見過ごされていた天然成分から構造を決定ができるようになっています。その一例として干潟に含まれる放線菌がつくる微量成分から、これまで報告されたことのない新しい化合物を発見することができました。このように分析技術の革新が、これまで想起できなかったユニークな化合物をわたしたちに教えてくれます。

発見した化合物を合成し、評価する

 さて、機器分析技術を活用して発見した新規化合物ですが、充分な量がなければ、生物活性を正確に評価することができません。わたしたちの研究室では、有機合成化学の技術を活用して、化合物の大量合成も行っています。有機合成化学は分子と分子を自由自在に繋いで小さな分子から大きな分子を作る技術であり、大量・安定・安価に医薬品あるいはその候補化合物を供給することを可能にします。わかりやすく言いますと、LEGO©︎ブロックのように小さなパーツをつないでいくことで、植物や微生物が作り出す分子を人工的に合成します。わたしたちの体の中では酵素という巨大な分子が、逐一精密な分子合成を行っています。この瞬間も、みなさんの体の中では分子同士が反応し、体の秩序を保つために必要な化合物を合成しています。
われわれの研究室では、生物活性を示す候補化合物に構造修飾を加えることで、より副作用が小さく、より有効な化合物へと分子構造を磨き、新しい医薬品や機能性成分を創出することを目指しています。