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ゲノム機能

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クロモエクセル(ゲノム機能分野)

 クロモエクセル[Chromoexcel]は、マウスの染色体上に、遺伝子が存在する場所と存在しない場所を、エクセルアートの手法を用いて描いた図です。併せて、私たちが研究している遺伝子トラップクローンの分布も示しています。ホームページ:Chromoexel by EGTC [https://chxl.egtc.jp]をご覧ください。

 遺伝子トラップ [Gene Trap] というのは、マウスのES細胞 [Embryonic Stem Cell] を用いて、ES細胞で働いている(発現している)遺伝子を捕まえる方法です。私たちは、可変型遺伝子トラップ法という新しい方法を開発し、作製したトラップクローンの情報を、EGTC(Database for the Exchangeable Gene Trap Clones) [https://egtc.jp]というデータベースで全世界に公開しています(図1)。また、世界各地で大規模に遺伝子トラップを行っている研究施設の情報を集めたIGTC (The International Gene Trap Consortium) [https://igtc.org]というデータベースがあり、EGTCもその中に入っています。

図1

 この、トラップクローンの分布と、遺伝子の分布を細かく見たのがクロモエクセルです。図2にその作り方を示しました。エクセルというのは表計算ソフトですが、そのエクセルを使って描かれた絵のことをエクセルアートと呼びます。染色体の端から100 kbp毎に、遺伝子の数とトラップクローンの数を調べます。遺伝子が1個でもあれば水色、なければ無色です。また、各染色体のセントロメア側末端(0M)から3 Mbp (3,000,000 bp)はまだシーケンスが解読されていない領域でGapと呼ばれています。この部分は灰色にします。次に、トラップクローンが1個も無ければ無色、1〜19個あれば橙色、20個以上あれば赤色です。遺伝子もトラップクローンも、100 kbpで1列x3行使用します。図2はマウスの染色体の中で一番短い19番染色体(Chr.19)のクロモエクセルです。7Mあたりの拡大図も載せています。赤丸で示しているのは、遺伝子が1個も無いのに遺伝子トラップクローンが20個以上集積している領域(TCAA: Trap Clone Accumulated Area)です。

図2

 クロモエクセルを見ると、広い範囲に渡って遺伝子が全く無い領域(遺伝子砂漠)が結構あることが分かると思います。また逆に、遺伝子はあるのに遺伝子トラップクローンが全く無い領域も結構あることが分かると思います。遺伝子トラップというのは、主にES細胞で働いている(発現している)遺伝子を捕まえる方法ですので、遺伝子はあるのに遺伝子トラップクローンが全く無い領域は、その遺伝子がES細胞では働いていないことを示唆しています。逆に、遺伝子は無いのに遺伝子トラップクローンが数多く存在する領域というのは、私たちがまだ知らない遺伝子または遺伝子の様なものが存在することを示唆しています。私たちは、この様な不思議な領域の研究を行っています。