
令和3(2021)年5月、国内初となる「医薬品包装」に特化した研究講座が、この熊本大学の大学院生命科学研究部(薬学系)に設立されました。「医薬品包装」は、お薬の品質を守るだけでなく、使用時の安全性を保つために、様々な働き(要件・機能)を兼ね備えています。近頃ではお薬に関するご要望の多様化や情報量の増大、情報伝達の迅速化などにより、医薬品包装に求められる働きが益々高度になってきています。
お薬は、食品や化粧品よりも一層厳しい製造管理の下で出荷されますが、医療関係者や患者などのエンドユーザーの使用状況によっては、流通の末端でのお薬に求められる働きが損なわれることもあります。実際、お薬の包装・表示のあり方に由来する医療事故が過去に発生しており、そのような医療安全に係る問題を解決するための、医薬品包装上の工夫が求められることになります。
海外では、医薬品包装に関する知識や技術を学問として捉え、書籍も数多く出版されていて、産官学を交えた議論が活発に行われています。一方、国内では公定書に包材規格に関する記載でが少なく、試験法はあっても特性値の規格は各企業の自己責任に委ねられているのが現状です。このように、国内における学問としての医薬品包装の概念は希薄で、産業界のみならず大学ても専門家が少なく、当該分野に特化した研究講座はこれまで存在してきませんでした。こうした背景の下、医薬品包装を学問として国内に定着させ、産学連携で社会に貢献するため本講座が設立され、設立構想にご賛同いただいた包装機械・包装材料企業と保険薬局からの寄附により運営されることになりました。
当講座の設立に際しては、大学の関連分野の方々とどのような立ち位置から何を研究することが望ましいか、充分な議論を重ねました。その結果、アカデミアとしての中立性を踏まえ、薬剤師の職能、SDGs、グローバル動向などの観点から、産・民(医療関係者・患者・介護者など)・官と連携し、医療現場の課題を掘り起こし、その解決に繋がる包装研究の必要性が認識されました。さらに、これらの研究を学問として確立し、患者・医療現場・企業の「三方良し」の精神で社会に貢献するため、次に示す具体的な取り組みをはじめました。1)
令和3(2021)年7月より、半年に一度の目安で、ご興味のある方であればどなたでも参加可能な、無料の公開セミナーやシンポジウムを開催しています。この場を通じて、これからの「医薬品包装」を検討していくうえで考慮しておくべき背景動向についての情報(包装に求められるもの2)・箱出し調剤3)・近未来薬局4)・リニア搬送5)・災害時の医薬品搬送6)他)を提供しています。
その他、発売済製品の包装仕様変更前後の使用性比較評価や、錠剤表面への製造ロット・製造年月情報の直接表示方法の検討7)、今後の箱出し調剤への移行可否の意識調査といった、お薬の包装・表示に関連した各種の共同研究についても実施しています。