医療薬学専攻 博士課程

養成する人材像

医療薬学専攻

医療薬学専攻では、「社会が求める実践的な高度専門職業人は、いわゆる特定分野の深い知識・技能に加え、薬学全般に通じている人間でなければならない」という考えに基づき、創薬科学、生命科学、生命倫理、医薬品開発、臨床試験、論文作成技術、副作用被害、医療訴訟などの幅広い知識・技能を持ち、かつ臨床および企業等の現場での実践的能力を身につけ、将来、それらを病院、薬局、製薬企業、CRO、SMO、CMOや大学・研究所で活かせる先導的薬剤師および臨床現場の薬剤師業務を理解する基礎薬学研究者、製薬企業等での医薬品製造研究者・臨床開発者、治験コーディネータ、大学等での教員・研究員として活動する人材を育てることを目的とする。この目的に応じたカリキュラムとして、先導的薬剤師の養成を目指す「臨床薬学」コース、および臨床の分かる研究開発者および教育者の養成を目指す「医療薬科学」コースの2コースを設置する。先導的薬剤師には、がん専門薬剤師などの各種専門薬剤師・認定薬剤師等のある特定の疾病に対する薬物治療のスペシャリストと、病院・薬局において、薬剤師全般の業務に対して強い指導力を発揮できる指導薬剤師の両者が社会的に要望されており、それぞれのニーズに対応したカリキュラムが必要である。さらに社会が求める即戦力としての先導的薬剤師を養成するためには、臨床現場における1年にわたる実践的・先端的実習が必要であるため、臨床薬学コースを選択するには薬剤師の資格が必要である。一方、病院・薬局等の医療機関では、エビデンスに基づく医療の実践の必要性やある特定の疾患の薬物治療のスペシャリストである専門薬剤師・認定薬剤師等の養成が強く叫ばれており、そのためには、臨床現場での実務経験、専門的授業の受講、国内外での学会発表および国際専門雑誌への論文投稿などが推進されている。製薬関連企業も、市場性や開発環境などの理由から、活動範囲を国内から海外へと急速にシフトさせており、グローバル化の流れが非常に激しいことから、国際化に対応できる即戦力としての研究者が強く求められている。これらのニーズに応えるために、外国語能力および論文作成能力を醸成する授業科目が必要である。医療薬学専攻では、これらの人材養成目標にきめ細かく、適切に対応したカリキュラム編成を行った。

6年制学士教育課程を基礎とする4年一貫の博士課程では、優れた研究能力と臨床薬剤師としての職能を併せ持つ人材の育成が期待されている。そのため、研究能力および職能の両者を育成するカリキュラムの構築を目指すこととした。しかし実際の本大学院に入学する学生には、臨床現場の薬剤師業務の知識や技能を活かせるような基礎研究者や開発研究者、さらにはCRO・SMO, 治験コーディネーターや大学等での教員や研究員を目指す者、一方では病院や薬局での先導的薬剤師を目指す学生の両者が存在することが分かった。そこで、大学院入学者数の増加を期待して、学生のニーズを満たすべく、2つのコースを設置することとした。医療薬科学コースでは、臨床現場で学んだ薬剤師業務の知識や技能を活かした基礎研究者、開発研究者、教員等を養成することを目的とし、これらの業務に共通な授業科目を設置することとし、1)製薬企業での研究・開発、2)CRO、SMO、治験コーディネート、3)大学・研究機関での教育・研究を目指す学生に対し、それぞれの履修モデルを作成した。

創薬・生命薬科学専攻

4年制の学士教育課程を基礎とする大学院(創薬・生命薬科学専攻)については、既に平成22年度に博士前期課程を設置し、新たな教育プログラムの実施を開始したところである。本専攻では、独創的な発想力、探究心、創薬マインドを育みながら、物理系薬学、化学系薬学、生物系薬学、生命科学を中心とした基盤的学問における知識・技能を礎として、自らの専門領域において卓越した研究能力を発揮できると同時に、創薬科学・生命科学を俯瞰的に捉えて問題設定・問題解決を自主的に行い、先端的創薬科学・生命科学研究や医薬品開発の場において指導能力を発揮できる人材を育成することを目的とする。医薬品産業は21世紀の我が国を支える基幹産業であり、科学技術創造立国の一環として、ゲノム創薬を基盤とする分子標的薬、抗体医薬、機能性核酸医薬の開発が強く要望され、さらには、先端医療の中でES細胞やiPS細胞を用いた再生医療・細胞医療の開発は国民の期待が非常に高く、国家戦略的重点化事業として取り上げられている。これらの事業を強力かつ持続的に推進するためには、国際競争力を持つ創薬研究者、生命科学研究者およびそれら技術者の育成が必須である。これら高度専門職業人(研究者、技術者)は特定分野の深い知識・技能に加え、創薬・生命薬科学全般に通じた人材(いわゆるT字型人間)でなければならないという考えに基づき、幅広い知識・技能を持ち、かつそれを製薬企業、創薬系ベンチャー企業、大学・研究所で活かせる研究者を育てる。本専攻は、実践的な創薬科学研究者を育てることを目的とした大学院教育改革支援プログラム「創薬研究者養成プログラム」(平成19~21年度)で構築したカリキュラムを発展的に継承する。すなわち、メディシナルケミストリー(化学系創薬研究者の養成)、バイオファーマ(生物系創薬研究者の養成)、ドラッグデリバリー(薬剤・創剤系創薬研究者の養成)、ライフサイエンス(生命科学研究者の養成)の4コース制とし、博士前期課程において、各コースの専門分野に特化した講義・演習・実習科目を履修する。今回設置する博士後期課程のカリキュラムにおいては、独立した研究者として必須の素養である自主的な問題設定・問題解決能力を身につけさせるため、博士論文に直結する「特別実験Ⅱ」に加えて、製薬企業あるいは大学・公的機関等における研究企画評価を想定した企画書・研究計画書の作成とプレゼン、ならびに計画に即した研究の実行を課す「課題実習」を組み込んでいる。また、実際の医薬品研究開発の場面において必要となる特許、市場調査、臨床開発に関する演習科目を設定し、医薬研究開発の全体像を理解させる。さらに、ベンチャー起業の方法と課題、大学教員に必要な心構えや効果的教育方法、および大学経営について理解するための演習科目を設定し、課程修了後の進路の選択にも直結する内容を含むカリキュラムとした。