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今月の薬用植物
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2013年2月

ダイコン(Raphanus sativus L.)
アブラナ科(Brassicaceae)


 2月10日が旧正月、新節ですね。2月に入り温かくなりましたので、味噌天神の梅の蕾も大きく膨らんでいます。北向きの日当りの良い場所では "シロバナタンポポ""ハナダイコン(オオアサセイトウ)"の花が咲きだしました。今年はヒョドリが多かったので、ロウバイの花は咲けばヒヨドリにツイバマレて花と香りを楽しめませんでした。温かくなると居なくなるので早く温かくならないかなと思っています。
手術をして2ヶ月が過ぎますが体調(QOL)はまだまだです。筋力トレーニングを兼ね外での除草作業をボチボチ始めました。

 今月の薬用植物は春の七草のスズシロ(蘿蔔)のダイコンです。アブラナ科植物は、辛味の成分のイソチオシアナート(イソチオシアネート)類を含みます。イソチオシアナート類は辛味受容体のTRPA1 agonistです。TRPA1は、わさびの辛味の受容体であり、17℃以下の冷温度域で痛み刺激を感じます。TRPA1を活性化させると、寒くなる(17℃以下の冷温度)と脳が判断し、体を温め始めますので、暖かくなると考えられています。

 ダイコンの根(肥大根)は剃り下ろすと特に辛くなります。これは細胞を壊すことによりカラシと同じ様な辛味の成分が酵素(タンパク質で出来ている)で分解して生成します。切るだけですと辛味はほとんど生成しませんし、熱をかけると「酵素」は失活(機能を失う)しますので、煮物にした時は、辛味はほとんど感じません。またダイコンの中には澱粉・多糖を分解する酵素(アミラーゼ、ジアスターゼ)が入っていますので、澱粉の消化を助けます。この酵素を見るにはダイコンおろしと納豆を混ぜ、糸が引かなくなるのを観察するのが良いですね。
 ダイコンの根(肥大根)(中国では「菜箙(らいふく)」という)は、辛甘、涼。肺・胃に入り、積滞を消す、痰熱を化す、気を下す、中を寛やかにする、解毒する等の効果があり、消化を助け、咳・咽に痛みを抑え、痰を除く、イライラした気分を落ち着かせる等の作用が期待できます。種子(菜箙子(らいふくし))は、辛甘、平。肺・胃に入り、気を下ろし喘を定める、食滞を消し痰を化す等の効果があり、咳・咽の痛みを抑え、痰を除く、消化を助ける等の作用が期待できます。葉(菜箙葉(らいふくよう))は、辛苦、平で、脾・胃に入り、食を消す、気を理する効能がある。
また、阿蘇の民間療法では、ダイコンの干した葉を、浴剤として風呂に入れ、女性の冷えを予防するそうです。面白いのは、ダイコン葉の煮汁を産後の牛に飲ませると親牛の胎盤の排泄が促進され、産後の肥立ちが良いと今でも使っています。さらに干葉湯(ちばゆ)は、ダイコンの干した葉を浴剤として冬に冷えた身体を温めるのに用いる習慣が各地であるようです。
 11月にNHKの朝イチで干葉湯(ちばゆ)を取り上げる予定だったのですが、国会中継が入り流れました。ダイコンの干した葉を風呂に入れると何故温まるのかという問合せがありました。辛味の成分が皮膚吸収し、血管を拡張、血流量を上げる可能性があるからだと思います。しかし、沢山入れ過ぎると、皮膚が「ピリピリ」しますので、皮膚の弱い人は注意して下さい。また、細かい毛があり、物理的に刺さる等の刺激で、皮膚が痛くなることもありますので、アレルギー等の皮膚疾患のある方は、注意して下さい。
 風呂に用いたい時、前もって大丈夫かどうか試す方法。1)まず、煮出した液を布に浸し、腕につけてみる。これで問題なければ、2)次は、二の腕(脇の下の近く)につけてみる。これで問題なければ、3)お腹、脇腹につけてみる、これで問題なければ、4)風呂に少し薄めの煮汁、または葉をネットに入れてみる。 葉は無農薬の物を使って下さいね。
 無農薬のダイコンの葉、ニンジンの葉は抗酸化力が大変強いので、小さく切り、チリメン雑魚と一緒にフライパンで炒って、振り掛けにすると美味しいです。子供が喜んで食べ、また骨粗鬆症の予防にも良いですね。風邪の予防にも良いかもしれません。   

ご自由にご利用ください!
"2013年 2月カレンダー ローゼル"
"2013年 3月カレンダー ダイコン"


写真(花、実:2010年3月 薬用植物園にて、七草:2013年1月に購入)
(資料,写真・文章責任 薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター)
Medicinal Plants Eco-Frontier Center(Medicinal Botany and Ethnobotany )
(薬用植物・生薬学分野) 
矢原 正治(専門:薬用植物学、臨床生薬学、漢方、民族植物学、環境保全、育種),
                            (変更日:2013.1.31)
 
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, from 8, May, 2004



 
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