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メンバー

東 大志 (ヒガシ タイシ、HIGASHI Taishi)

■経歴
1981 年 鹿児島県生まれ
2004 年 3 月 熊本大学 薬学部 薬科学科 卒業
2004 年 4 月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士前期課程 入学
2006 年 3 月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士前期課程 修了
2006 年 4 月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士後期課程 進学
2008 年 6 月 ドイツ Evonik 社研修 (Darmstadt, Germany) (2008 年 10 月まで)
2009 年 3 月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士後期課程 修了
2009 年 4 月 大正製薬株式会社 セルフメディケーション開発研究所 入社
2011 年 3 月 大正製薬株式会社 セルフメディケーション開発研究所 退社
2011 年 4 月 熊本大学 大学院生命科学研究部 助教
2013 年 10 月 National University of Singapore 客員研究員 (2014 年 10 月まで)
2016 年 4 月 株式会社サイディン 技術顧問 (2022 年 4 月まで)
2018 年 11 月 文部科学省 卓越研究員
2018 年 11 月 熊本大学 大学院先導機構 准教授
2020 年 4 月 熊本大学 産業ナノマテリアル研究所 准教授 (併任)
2020 年 4 月 熊本大学 グローバル天然物科学研究センター 製造・品質管理・分析部門

2022 年 4 月 株式会社サイディン 取締役 CTO (兼任)
2022 年 10 月 熊本大学 ワクチン開発研究センター ワクチン製造研究部門/投与デバイス開発研究部門


■業績
:業績の詳細は以下のリンクをご参照ください。
Scopus (ID: 16028467100)
researchmap (ID: 7000016709)


■賞罰

2007 年 12 月 日本薬学会九州支部大会優秀発表賞
2010 年 7 月 社団法人日本薬剤学会 Postdoctoral Presentation Award
2016 年 9 月 シクロデキストリン学会奨励賞
2017 年 12 月 The 9th Asian Cyclodextrin Conference Nagai Foundation Poster Award
2018 年 3 月 日本薬学会奨励賞
2018 年 10 月 平成 30 年度 熊本大学教育活動表彰
2018 年 11 月 日本バイオマテリアル学会科学奨励賞
2019 年 7 月 日本 DDS 学会奨励賞
2020 年 5 月 日本薬剤学会奨励賞


■研究領域
製剤学、超分子化学、超分子薬学


■研究キーワード
シクロデキストリン、ポリカテナン、ポリロタキサン、ポリエチレングリコール、ドラッグデリバリーシステム、
生体素材、超分子ナノロボット


■研究内容:詳細は以下の動画あるいは以下の文をご参照ください。

超分子薬学

(熊本大学薬学部オープンキャンパスへのリンク)


ポリカテナン

(channel新技術説明会へのリンク)



変幻自在ポリマー



ゲノム編集分子キャリア

(熊大 研究シーズ紹介へのリンク)



我々は新しい視座により未来の医薬品を創造したいと考え、新規学術領域「超分子薬学」を提案しています。

1) 超分子とは

超分子とは、複数の分子が集合してあたかも一つの分子のようにふるまう物質のことをいいます。また、超分子を創るための学問を超分子化学といいます (1)。超分子は構成成分単体では成し得ない多彩な機能を発現することから、文字通り "分子を超えた分子" として大変注目されています。

図1.png

1. 超分子のイメージ

超分子・超分子化学というと医学薬学分野にはあまり馴染みがありませんが、我々の身体の中には超分子・超分子化学が溢れており、生命や創薬を考えるうえで本源的な学問であるといえます。例えば、DNA や細胞などの生体物質は美しい超分子であり、細胞内シグナル反応や免疫応答などは非常に精密に制御された超分子化学反応です。セントラルドグマを超分子化学反応として見つめなおすと、人体への強い感銘や尊敬の念を覚えます。製剤・DDS 領域においても、リポソーム、ミセル、ナノゲル、包接錯体など、超分子素材が汎用されています。極論を言えば、人体を一つの超分子とみなすこともできます。生体が死体に変わった直後、人体を構成する化合物種や質量は生前と同一であるはずですが、生死の前後で人体の機能に明確な違いがあることを考えると、「生きているということは超分子化学反応が絶えず起き続けることである」と思考することもできます。このように、超分子化学の観点から医学・薬学を再考すると、新たな視座で生体反応を思考でき、ユニークな創薬研究を展開可能であると考えます。



2) 超分子薬学の提案

そこで我々は、薬学に超分子・超分子化学の概念を積極的に導入することによって、従来の薬学を超えた新しい薬学を創生したいと考え、新規学術領域「超分子薬学」を提案しています (2)。超分子薬学により、これまでにない新しい医療、薬物、技術、素材、診断法、機序、仮説などを創生することができると考えています (Chem. Pharm. Bull. 2018, 2019; 薬学雑誌 2019, )

図2.png

2. 超分子化学と薬学を融合した新規学術領域「超分子薬学」の概念

例えば、図 3 には超分子薬学の考え方に基づいた創薬研究の一例を示します (Chem. Pharm. Bull. 2018, 2019)。これまでの創薬では、標的分子に対して 1 カ所で結合する低分子や抗体を構築することが多かったですが (図 3a)、超分子薬学の考え方に則ると、多カ所で結合する超分子を用いることにより、高い親和性と選択性を有する薬物の構築が期待できます (多カ所結合型; 3b)。また、標的組織で特異的に分泌される内因性物質が存在する場合、内因性物質と超分子を形成したときだけ活性を示す化合物を構築できれば、高選択的な薬剤として有用です (会合型; 図 3c)。対照的に、超分子の状態では不活性で、疾患組織で解離して活性を示す化合物も副作用の少ない薬剤になり得ます (解離型; 図 3d)。さらに、超分子特有の動的特性により、標的分子のかたちを認知して変形する超分子化合物も高い選択性を有する薬剤として期待できます (変形型; 図 3e)。我々は超分子薬学の上記考えた方に基づき、独自性の高い製剤技術や DDS 技術の開発ならびに新しい創薬研究を展開しています。

図2.png

3. 超分子薬学に基づく創薬の概念図



3)超分子アクセサリー: 超分子薬学に基づく製剤・DDS素材の開発

我々は現在、超分子薬学の概念に則り、薬物の性質を格段に向上させる超分子アクセサリーを開発しています (薬剤学 2021; バイオマテリアル 2019; DDS 2019, 他)。例えば、糖尿病治療に用いられるインスリンのために、超分子ネックレス (図 4a, b) あるいは超分子イヤリング (図 4c) をデザインし装飾すると、既存の持続性インスリン製剤よりも血糖降下作用が持続することを明らかにしました。さらに我々は、薬物のかたちを認知して変形・相互作用する変幻自在型素材も構築しています (図 4d, e)。このように、超分子薬学の概念に基づいて新しい薬学の構築に挑戦すると、これまでの薬学を超えた製剤・DDS 技術の創出が期待できると考えます。

図4.png図 4. 超分子アクセサリーの一例



4)超分子医薬品:超分子を医薬品にする

近年、医薬品が低分子からタンパク質や核酸等の高分子に推移しています。我々は新しい薬のかたちを創出することを目的として、超分子自体を医薬品として応用する研究を展開しています (投稿準備中)。例えば、がん細胞表面に高発現する受容体の分布を認知して変形し、がん細胞と強く結合する結果、がん細胞選択的に取り込まれて傷害性を発揮する超分子抗がん剤を構築しています (図 5)


図4.png

図 5. 超分子抗がん剤の抗がん活性誘導機構



5)超分子薬学のための新規利発型超分子の創出

我々は現在、超分子薬学のための新規基盤材料の構築を目的として、環境を察知して変形する利発型素材を開発しています。例えば、命令した (加熱した) ときだけ集合してポリ擬ロタキサン (図 6) と呼ばれる超分子を形成し、冷却するとバラバラになる熱応答性素材の開発に成功しました (ACS Macro. Lett. 2016)。また、ポリカテナン (図 6) と呼ばれる珍しい超分子を、シクロデキストリン (CyD) と呼ばれる環状分子を用いて構築することに初めて成功しました (Commun. Chem. 2019, )。このポリカテナンはネックレスのような美しい構造を有し、還元環境を察知して分解する性質を示しました (図 7)。今後、これら利発型素材を用いて、超分子ナノロボットを開発し、ナノサイズの医療システムを創りたいと考えています。

図5.png

図 6. ポリロタキサン・ポリカテナンの調製経路

図6.png

図 7. CyD ポリカテナンの調製経路

6)まとめ

近年、抗体や核酸などのバイオ医薬品の開発が世界中で活発になっていますが、我が国はバイオ医薬品の開発に大きく出遅れてしまったと言われています。また、世界的にバイオ医薬品の開発が激化している一方で、それらに対する製剤・DDS 技術の乏しさも指摘されています。私は、超分子薬学の概念を通じて、バイオ医薬品に代わる新たな概念の医薬品・創薬研究ならびにバイオ医薬品のための革新的な製剤・DDS 技術を創出することができれば、我が国の創薬研究・開発は活気を取り戻し、世界に大きく貢献できるものと考えています。



■趣味
サ活 ("ととのう"のその先へ)、旅行、お笑い鑑賞、ドラマ鑑賞、海外ビール

■連絡先
E-mail : higashit(at)kumamoto-u.ac.jp
※(at) を@に換えてください。
TEL : 096-371-4168