当研究室は、2007年4月に新たにスタートをした若い研究室です。歴史はまだ浅いですが、創成期の活気があります。まだ伝統に固まっていない、自由度があります。
あまり細かいことは言いません。望んでいることは、研究へのこだわりと科学への真摯な態度です。自分が取り組もうとする研究について、その歴史的経緯を学びましょう。何故、それを研究する意義があるのか、自分は何を明らかにしようとしているのか、それが明らかになったら世の中はどう変わるのか。
自分が取り組んでいることに、とことん集中するミクロの眼を育てることは大切です。その一方で、サイエンスという大きな世界の中で、自分が成し遂げようとしていることは、どのあたりに位置するのか、というマクロの眼も兼ね備えた研究者を養成したいと考えています。
実験操作ひとつにしても、何故それを行うのか?それで何がわかるのか?常に考え、理解しながら実験することを目指します。失敗上等!失敗から学べることはたくさんあります。研究室に来たばかりの頃は、失敗続きだった学生さんがいつの間にかスキルアップしているのをしばしば目の当たりにします。
研究成果をまとめることにも、こだわります。研究者としてだけでなく、社会に出た時、あらゆる場面で「まとめる力」は要求されます。学生さんには、積極的に学会発表や論文投稿を勧めています。学会発表を機に、飛躍的に研究者としての実力が伸びた学生さんもいます。
ディスカッションはいつでも歓迎します。かかってきなさい、若人よ!
蛇足ですが、研究というのは結果が出れば華やかですが、それまでは地味な作業の繰り返しが多いものです。苦しいときも粘り強くやり続けることが、華やかな成果につながります。続けようと努力する人、当研究室はそういう人たちを応援します。
「熊本大学薬学部」のほか、「薬学教育部」「生命科学研究部」などたくさんの名称があり、わかりづらいかもしれません。これは、学部学生、大学院生にとっての組織の名称と教員組織の名称がそれぞれ異なるためです。4年制および6年制の学部学生にとっては「熊本大学薬学部」となります。
大学院生にとっては「熊本大学大学院薬学教育部」となります。教員組織としては「熊本大学大学院生命科学研究部」となります。
〜ライフサイエンスの研究者へ、大学院進学を視野に〜
せっかく薬学部にきたのだから、薬学部でしかできないことをやりましょう。4年制のほぼすべての学生が、大学院進学を希望し、研究者を目指しています。4年制の学生は、3年生の4月に研究室に配属されます。当研究室では原則、学部および修士課程を含めた4年間の一貫教育として指導を行います。
熊薬の4年制学生は、多くの他大学薬学部に比べ、およそ半年間早く研究室に配属されます。このため、実験技術の取得や研究者としての自立が早くできるというメリットがあります。また6年制学生のように、多くの実習や薬学共用試験*などによる研究の中断がなく、継続的にひとつのテーマに取り組んでいくことができます。4年生から修士1年頃に学会発表、修士2年頃に論文投稿ができることを目標にしています。
修士課程修了後は、博士課程への進学や、製薬会社の研究職という進路を希望する学生が多いようです。
〜研究もできる薬剤師へ、薬剤師マインドをもった研究者へ〜
6年制コースは、薬剤師国家試験の受験資格を得ることができます。しかし、熊薬の6年制コースは、薬剤師養成の専門学校ではありません。学生は3年生の12月に研究室に配属され、3年4か月間にわたって選んだ(または与えられた)研究テーマのもとで研究生活を送ります。研究することで培われた知識と経験は、必ずや薬剤師としてのキャリアに役に立つと思います。さらに当研究室では、薬剤師としての幅広い知識をもった研究者の養成も目指しています。
6年制学生は、4年生の12月と1月に薬学共用試験*、5年生の6月から12月に病院薬局実習、6年生の3月に薬剤師国家試験があります。実習や試験のための準備期間など、研究にどっぷり集中できない時期がありますが、その点はテーマの選び方や、研究計画において配慮します。
また、更に研究を続けるために大学院博士課程に進学し、研究者としての道を歩む選択肢もあります。薬の現場を体験したからこその強みを研究に活かせると思います。
* 薬学共用試験:薬局実習の資格を得るために必要な試験。 OSCE(Objective Structured Clinical Examination:オスキー)とCBT(Computer Based Test)の2種類がある。4年生の12月と1月に実施。
〜ようこそ、熊薬へ。ようこそ、分析化学分野へ〜
ライフサイエンスを学べる学部は、薬学部の他にも、医学部、理学部、農学部などがあります。では、何故、薬学部なのでしょうか?薬学部だからこそできることは何なのでしょうか?
薬学部は、人の体や薬について深く学べるところです。「分析化学」「有機化学」「物理化学」「生化学」「分子生物学」といった学問は、他の学部でも開講されています。しかし薬学部で開講されているこれらの科目は、医療や創薬を意識した学問体系になっています。さらに、「薬理学」「薬剤学」「製剤学」「薬物治療学」といった分野は、薬学部でしか学ぶことができません。これらを若い時期に学べることは、ライフサイエンス、特に医療・創薬を目指していく上で、非常に恵まれていると言えます。
分析化学は、これらの学問分野のすべての基盤となる研究領域です。多くの高校生の皆さんが、熊大薬学部を、そして分析化学分野を目指してくださるよう願っています。
〜研究者への道、高みを目指し真理に近づこう!〜
大学院では、実験・発表を通じて、研究者としてのスキルを高めます。より高度な研究を行うことにより、一人前の研究者としての道を歩んでいくことになります。将来は、さまざまな研究機関での創薬研究を目指す人が多いです。
当研究室では、院生は各自が独自のテーマをもって、研究を進めます。大きなプロジェクトチームの一人としての分担作業ではないので、成果が上がれば、自分で学会発表をすることになります。研究上のディスカッションは、研究室全体でも行いますし、個別のディスカッションも随時行います。学生同士で自由にディスカッションを行っている風景も見られます。
スタッフや学生同士、ともに高め合いながら、高い意識をもって自然の摂理の解明を目指しましょう。
コニカミノルタ,久光製薬,化学血清療法研究所、県職員(鹿児島,岩手),麻薬取締官,病院(熊大,済生会,今給黎 etc.),調剤薬局(ファーマダイワ,タカサキ,日本調剤,くすりのハーモニー etc.)(25年度の内定先も含みます。)