育薬(いくやく)とは

医薬品は発売された後、開発の段階では予測できなかったことが、初めて明らかになってくることも少なくありません。こうした実際の治療を通して得られた情報をもとに、クスリの有効性や安全性の向上、使い方の改善、適応の拡大などを行うことを『育薬』といいます。より治療に役立つクスリへと育て上げていくプロセスです。

年齢や性別、体質、病気の症状など条件の違う患者さんに使われたり、他のクスリと併用したり量を調節したりするため、医薬品の使用には患者さんの数だけさまざまなケースが存在することになります。そのために、開発の段階では予測できなかったことがわかることがあるのです。

例えば、特定の症状を持つ患者さんに使用すると副作用が現れやすかったり、目的とは別の病気への治療効果が発見されたり、より効率的な使用法が見つかったりなど、良いこともその逆のケースもあります。

薬剤師は、日々の業務である「医薬品の適正使用」に加えて、これら医薬品市販後の諸問題をピックアップし、迅速に解決していく「育薬」という極めて重要な役割を担っています。

医薬品開発は創薬だけで終わるものでは決してなく、薬を正しく使ってじょうずに育てる「育薬」までをも含むものであると言っても決して過言ではありません。

この「育薬」を医療機関と大学が協力して効率よく進行させるための機関が、育薬フロンティアセンターです。

育薬の実例

アスピリン

1899年に開発された解熱鎮痛薬アスピリンは、長期間服用すると血が止まりにくくなるという副作用があることが知られていました。これが心筋梗塞や脳梗塞の予防に使えるのではないかという指摘があり、臨床試験が進められた結果、少容量で血栓の予防効果があることが認められました。現在は、適用に加えられて多くの患者さんに使われています。

ニトログリセリン

狭心症の発作が起こらないようにするクスリであるニトログリセリンは、舌の裏側に入れて使用する舌下錠として用いられて来ましたが、効果の持続性が無いという欠点がありました。このような情報をもとに、皮膚に貼り付けるタイプのニトログリセリンが開発されて使われるようになりました。皮膚から毛細血管にゆっくりと吸収されるため、クスリの効果を持続されられるようになり、貼ったまま眠ることも出来るので発作の予防にも使えるようになりました。

口腔内崩壊錠

高齢者施設からの、ものを飲み込む力が弱く、クスリがうまく飲めないケースの報告をもとに、口に入れると唾液で崩れるように溶けて、簡単に飲み込めるような錠剤が開発されました。 お年寄りや子供にとって飲みやすいのはもちろんのこと、緊急の場合には水なしで飲めるので、とても便利です。

このように、育薬には、クスリが使われる現場と、開発の現場との情報のやりとりが重要です。熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンターは、そのような情報の橋渡しや、薬剤師の専門性を高める教育を行うことにより、育薬の最前線に立つサービスセンターです。

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