熊本大学薬学部
 
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2002年12月

うすゆきくちなしぐさ (Monochasma savatieri Franch. ex Maxim.)
ごまのはぐさ科 (Scrophulariaceae)


うすよきの のにちりたみの 思い花(河童)
 今回は貴重な写真を提供いたします.ウスユキクチナシグサ,熊本県植物採集会の方々はよく御存知の植物ですが,一般の方々にはほとんど知られていません.何故なら,日本では熊本県の一箇所にしか無いからです.ゴマノハグサ科特有の下の花びらが突き出たラッパ状の花を咲かせますが,葉,茎にビロ−ド状の細毛が密生しています.中国大陸・福建省などに分布し,漢名を鹿茸草(lu rong cao)と言います.生薬で去痰止咳,止血,抗癌を目的に使用されるようです.
 1984年に初めて見ることができ,現国立医薬品食品衛生研究所筑波薬用植物栽培試験場で組織培養を始めたときに私が送り最初にクロ−ン増殖に成功した植物です.ウスユキクチナシグサはカヤの仲間に半寄生すると言われていますが,筑波で栽培したものをポットに植え込みますと,普通の植物と同じように単独で育っていました.ただ,条件が合わなかったのか長生きはしなかったようです.ここ10年ぐらい見に行っていませんので,現地では今はどのくらい生息しているかは分かりません.
 17年前に成分研究をさせていただきました.秋の地上部が枯れる前に採取した58gの新鮮な地上部から,なんと7個もの化合物を高収量(416mg 〜15 mg)で単離することができました(薬学雑誌. 106 (8), 725-728 (1986).これらは八味地黄丸等に配合される地黄の成分と類似し,上記の用途を十分に解明できるものでした.
 ウスユキクチナシグサの他にも,熊本・阿蘇にはヒゴタイ,ハナシノブ,ビャクシなど大陸系のものが多く生息しています.また,鹿本郡相良寺にあるアイラトビカズラもその一つです.これは古来より九州に多くの大陸からの人達が訪れているからでしょう.チクセツニンジンの発見者といわれる何 欽吉(かきんきつ.1650年頃)もその一人でしょう.11月29日(今日),中国で7000〜8000年前の木造船が見つかったとの報道が有りました.対馬海峡を渡り,また台湾,沖縄の島々を経て九州にたどり着いた人も多かったのではないでしょうか.その人達は生活品の中に,食料,種子等多くの植物の遺伝子を移動させたに違いありません.現在も私たちが同じことを考えるように.食の60%以上を輸入する日本,遺伝子組み換え,環境も含またいろんな食の問題が噴出していますが,日本人は食物を残して捨てることは有っても,食べれなくて餓死した人の話は聞ききません.食料の奪い合いをするような争いもなく,大変楽な世の中で暮らしています.多々問題はありますが生きるうえで基本的には問題ないですね.
 学ぶことでも楽をしていませんか.熊薬の学生さんに学ぶことへの餓えをあまり感じられません.11月25日から”漢方とハ−ブ(初級編)”のセミを始めました.寂しいながら学生さんの参加はゼロ.第一回目の出席者は10名(全員が薬剤師のみ)です.学生さん,一般の方の参加者をお待ちしています.


写真左1984年,85年撮影,
(資料,写真・文章責任 薬学研究科・分子機能薬学・創薬 基盤分子 設計学講座・矢原 正治,2002.11.29)

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