ホーム > 研究成果 > 遺伝性脂質異常症の原因タンパク質の糖鎖修飾に関わる新しいメカニズムを解明。Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載(遺伝子機能応用学分野)
研究成果

遺伝性脂質異常症の原因タンパク質の糖鎖修飾に関わる新しいメカニズムを解明。Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載(遺伝子機能応用学分野)

熊本大学生命科学研究部・遺伝子機能応用学分野の首藤 剛准教授らは,遺伝性脂質異常症(シトステロール血症)の原因となるタンパク質 ABCG5およびABCG8の,新しいかつユニークな糖鎖修飾メカニズムを解明しました.一般に,生体内においては,ABCG5およびABCG8は,相互に結合して存在し,体内の脂質量をコントロールしていますが,遺伝的または環境的要因によりABCG5/8タンパク質の細胞膜上の発現量が減少し,その機能が低下すると,遺伝性脂質異常症の発症や脂質過剰症の亢進に繋がります.

首藤准教授らは,ABCG5/8の発現量を調節するタンパク質修飾機構の一つとして「糖鎖修飾」に着目し,ABCG5/8タンパク質の糖鎖修飾が,STT3Bというタンパク質を含む糖鎖修飾酵素によって行われることを発見しました.また,一般に,ほとんどのタンパク質の糖鎖修飾は,タンパク質翻訳と同時に行われるのに対し,ABCG5/8タンパク質の糖鎖修飾は,タンパク質翻訳後に行われるという新しいメカニズムが関与していることを明らかにしました.さらにこのABCG5/8タンパク質の糖鎖修飾を調節する因子の探索とその機構解析を行った結果,HRD1というE3酵素が,従来から知られる酵素活性とは異なるメカニズムで,ABCG5/8の糖鎖修飾を抑制することも見出しました.ABCG5/8の機能や発現量が,細胞内でどのように調節されるかを理解することは,遺伝性脂質異常症や脂質過剰症に伴い発症する動脈硬化症・脳血管疾患・心臓病などの疾患に対する治療的アプローチを提起できる可能性があります.今後,本研究分野で見出されてきたHRD1やSTT3Bに関する更なる研究の進展が治療薬開発のための糸口になることが期待されます.

 

本研究の成果は英国 Nature Publishing Groupの科学雑誌「Scientific Reports電子版」で3月3日に 

公開されました.(Scientific Reports 4, Article number: 4258 doi:10.1038/srep04258)

このページの先頭へ