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研究成果

肝硫酸転移酵素阻害薬が急性腎障害の進行を抑制することを明らかにし、Biochem.Pharmacol.にレビュー掲載されました。(臨床薬物動態学分野)

肝硫酸転移酵素(SULT)阻害薬はインドキシル硫酸の蓄積を抑制することにより

ラット虚血/再灌流誘発急性腎障害の進行を抑制する

1熊本大学薬学部 臨床薬物動態学分野、2熊本大学医学部附属病院薬剤部 1吉村美里、1,2齋藤秀之

 

慢性腎臓病(CKD)や急性腎障害などにより腎臓の機能が低下すると、本来尿中へ排泄されるべき不要物質、いわゆるウレミックトキシンが体内に溜まってしまい、心臓や血管に対しても悪影響を及ぼすことがわかってきました。代表的なウレミックトキシンであるインドキシル硫酸は、腎臓機能の低下に伴って血中や組織に滞留し、酸化ストレスを引き起こすことで臓器障害をもたらすと考えられています。私たちのグループは、肝臓で異物や毒物の解毒を担っている硫酸転移酵素(SULT)を阻害する薬物がインドキシル硫酸の体内での合成を抑えることを見出してきました。

急性腎障害は生命を脅かすとてもリスクの高い病気であり、CKDに進行することが多いと考えられていますが、未だに有効な治療法や薬物が確立されていないのが現状です。最近では、腎障害が進行するメカニズムの一端としてウレミックトキシンが深く関わっていることもわかってきました。私たちは、急性腎障害を起こしたラットを用いて、ウレミックトキシンと腎障害との関係について調べてみました。その結果、血液中や腎臓中のインドキシル硫酸の著しい上昇とともに、Nrf2と呼ばれる転写因子(酸化ストレスの防御に働く司令塔的な役割を担うタンパク質)が活性化されていることを確認しました。さらに、SULT阻害薬物を投与することにより、インドキシル硫酸の蓄積が抑えられ、その結果として酸化ストレスが減少し、腎臓が保護される可能性を見出しました。ウレミックトキシンの合成を抑える薬物が腎臓を保護するだけでなく、心臓や血管の合併症を含む様々な尿毒症状を未然に防ぐ治療薬として効果的であるという新たな発想に基づき、腎障害や腎不全の治療薬候補となる化合物を探しています。

Biochemical Pharmacology 85 (2013) 865–872(レビュー掲載)

 

この研究内容については、2012年の米国腎臓学会にて、学部6年生の吉村美里さんが論文(ポスター)発表しました。
同学会は世界中から約2万人が集う規模ですが、日本の薬学部生の発表は唯一となっています。
 

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