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熊本大学
大学院生命科学研究部
環境分子保健学分野

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研究内容

SIV外被糖タンパク質とCCR5に対する抗体を同時に誘導できるワクチン抗原の開発

 臨床において非常にリスクの高い性行動をしているにもかかわらず感染から逃れているHIV感染自然抵抗者(ESNs)の免疫機構に学び、ウイルスエンベロープ(ENV)およびウイルスの侵入レセプターであるCCR5に対する抗体を同時に誘導できるワクチン抗原の作製を試みた。具体的には、ウイルスENVの3量体構造および糖鎖修飾を模倣した組換えタンパク質(SIVmac239 gp140(R512E, K523E))、CCR5の立体構造を模倣した環状ペプチド(cDDR5)、アジュバントとしてCpG-ODN、および将来的な粘膜免疫を考慮してM-cell標的分子TGDKをHub-antigenに結合させたHIV multiantigen vaccine(HMV)を作製し(図1)、アカゲザル鼠径部に皮下投与した。その結果、HMVを免疫したアカゲザルではESNs同様にウイルスENVおよびCCR5に対する抗体が同時に誘導され、in vitroにおいてSIVmac239に対する中和活性を有していたという知見を得た。さらに、この免疫応答を日常的に維持しておくことがHIVの侵入を阻止する重要な戦略であると考え、非病原性の交叉免疫抗原を探索したところ、交叉免疫を誘導する可能性ある抗原としてbovine alpha-2-HS-glycoprotein(bAHSG)を同定し、HMVを免疫したアカゲザルにbAHSGを追加免疫した結果、HMVを基礎免疫したアカゲザルにおいてウイルスENVおよびCCR5に対する血清中抗体が再誘導され、bAHSGが交叉免疫抗原になりうることが示された。まとめると、我々はウイルスENVおよびCCR5に対する抗体を同時に誘導できるワクチン抗原を新規合成できた点に注目している。また、bAHSGのような交叉抗原に日常的に曝露されることにより、ワクチン接種によって誘導された免疫応答がある程度のレベルで活性化されうる可能性を示した点は、HIVワクチンを開発する上で重要な知見と考えている。将来的にはより粘膜面にウイルスENVおよびCCR5に対する抗体を同時に誘導できるワクチンルートの開発を進めていきたいと考えている。
(Biochem. Biophys. Res. Commun. (2014) 443(1): 301-307.)

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図1 HIV multiantigen vaccine(HMV)