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熊本大学
大学院生命科学研究部
環境分子保健学分野

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研究内容

TGDKは、抗原取り込みのゲートウエイであるM細胞に結合する。

 M細胞って何だろう?外部環境に曝されている粘膜直下には粘膜関連リンパ組織(mucosal-associated lymphoid tissue: MALT)が存在し、腸管関連リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue: GALT)、鼻咽頭関連リンパ組織(nasopharynx/nasal-associated lymphoid tissue: NALT)、気管支関連リンパ組織(bronchial-associated lymphoid tissue: BALT)などが代表的なMALTとして知られており、これらの組織は抗原特異的免疫応答の誘導に重要なことから誘導組織(inductive site)と呼ばれる。MALTはリンパ濾胞上皮(follicle-associated epithelium: FAE)によって覆われており、主にパイエル板(Peyer's patch)のFAEに存在するM細胞が抗原の取り込みに特化している。M細胞を介して取り込まれた抗原は直下の樹状細胞(dendritic cells: DCs)やマクロファージといった抗原提示細胞に受け渡され、続いてヘルパーT細胞やB細胞などへ抗原情報が伝えられると考えられている。そして、抗原感作を受けた免疫細胞はリンパや血液循環系を介して実効組織(effector site)(腸管、呼吸器、唾液腺、乳腺等)へと到達し、そこで、分泌型IgA(secretory IgA: SIgA)を介して病原体などの付着・定着・侵入の防止に働いている。また、粘膜面による抗原感作はSIgAを主体とする粘膜面の抗原特異的防御能を惹起するだけでなく、IgGを主体とする全身・末梢系の免疫応答をも惹起できる。すなわち、粘膜免疫による免疫系の賦活化によって、粘膜における抗原の個体への侵入を防ぎ、仮に侵入しても全身性の免疫応答で迎え撃つことができるといった二重の防衛線を構築することができることになる(図1)。したがって、抗原の取り込みを担うM細胞を粘膜ワクチン開発のための標的とすることができれば、免疫系の賦活化を考えた場合、非常に効率的であると考えられる。

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 我々は、Gallic acidとD-Lysineを用いてtetragalloyl-D-trilysinyl diethylamine固層法による独自の方法でM細胞標的分子TGDKを作製した(図2, J. Immunol. (2009) 182: 6061-6070.)。つまり、TGDKを用いてワクチン抗原をM細胞へ効率的にデリバリーする戦略を考えている。


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 TGDKは、霊長類レベルおよびin vitroのヒトM細胞モデルでM細胞に特異的に結合できることが明らかとなっており、HIVやインフルエンザだけでなく粘膜を介した感染症に対するワクチン開発に貢献できるものであると期待している(図3)。

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