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今月の薬用植物
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2010年5月

セキショウ (Acorus gramineus Sol. ex Aiton )
ショウブ科(Acoraceae )




『気を少し動かし 前向きに 夢をかなえる 学問をしよう』(河童)

 5月5日は立夏ですね。25度を越えて毎日日中は暑いですね。連休はストレス解消できましたか?
 アイラトビカズラも連休中にほとんど散り、この暑さでシャクヤク、ダイダイ、シラン(紫蘭)も花盛りを過ぎました。カギクルマバナルコユリ、スイカズラが咲きだしました。朝・夕にはダイダイ、トウオガタマ、アイラトビカズラの花の甘い香りがします。
 今月の薬用植物は、セキショウです。入れ替えが連休で遅くなりました。
 昔はサトイモ科でしたが、現在はショウブ科に分類されています。和名を石菖(せきしょう)と言い、清流の流れる谷川の淵などに群生していますが、余り目立たない植物です。日本以外では中国〜ヒマラヤの、温帯〜暖帯に分布すると記されています。ショウブに比べて小型で、葉は20〜50cm位で光沢があり剣状です。熊本市内では3月中旬、桜の咲き始めることに棒状の花を咲かせます。全体に芳香があり、葉を切ると気が落ち着くような香りがするので好きです。  薬用としては根茎を用います。生薬名を石菖蒲(せきしょうぶ)と言い、中国では、味は辛く、性は微温。痰を除く、気を整える、血を活(い)かす、風を散らす、湿を去る等の効能があるとされ、聴力障害、腸や胃を温め、健胃・鎮痛作用があり、四肢の湿麻を除く等に用いるようです。また、芳香性健胃、駆虫、鎮静、鎮痛を目的に、胃痛、腹痛、リューマチ等に用いられます。また、昔から頭が良くなる薬、健忘症に効くとして用いられました。
 漢方処方で、枕中丹(ちんちゅうたん) 《備急千金要方》があります。 「石菖蒲、遠志、竜骨、亀板」の4生薬からなり、 心神不安、健忘失眠 の治療を目的に、心血虚による動悸、驚きやすい、不眠、健忘の改善に用いるようです 。
民間では、健胃、鎮痛、腹痛に1日量5g位を煎じ、1日3回に分けて服用。抗真菌性があるので、外用薬にも用います。浴剤として、足腰の冷え、筋肉痛、関節痛、ねん挫、打ち身等にも良いようです。薬用酒(1Lに100〜150g)も作れます。
 大分県の別府温泉の鉄輪にある、鉄輪の蒸し湯があります。普通の蒸気サウナではなく、 セキショウの葉を敷いた上に身体を横たえ、ジワジワと温泉蒸気とセキショウの葉の成分で体を温めます。一度行こうと思っていますが、実現していません。痛み、ストレス解消には大変良いのかなと思います。昔に比べ鉄輪の蒸し湯の大きさが4倍になったようで、セキショウの葉の供給が追いつかないのが難点です。天然のセキショウが絶滅しないように願っています。栽培は以外と簡単かもしれませんが、谷川の淵に生息しますので、日光が当たり過ぎると生長が悪いようです。
 5月の子供の節句の日(5/5)に、ショウブ湯の習慣がありますが、古くはセキショウの葉を用いたようです。しかし ショウブが身近で栽培できるようになってからは、ショウブ湯が主流になっています。

写真(花:2009年4月10日家にて)
(資料,写真・文章責任 薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター
Medicinal Plants Eco-Frontier Center (Medicinal Botany and Ethnobotany )
(薬用植物・生薬学分野)  矢原 正治(専門:薬用植物学、生薬学、漢方、民族植物学、環境保全、育種),変更日:2010.5.5)
 
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, from 8, May, 2004



 
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