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今月の薬用植物
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2009年7月

マタタビ( Actinidia polygama (Siebold et Zucc.) Planch. ex Maxim. )
マタタビ科 (Actinidiaceae)




『半夏生 夏も半ばに 梅雨空のした マタタビの白い葉さえる 山間に』(河童)

 今日7月2日は半夏生(はんげしょう)です。阿蘇でマタタビの白くなった葉を見て、どこか旅行に行きたいなと思っています。”またたび”の名前の由来は、1)アイヌ語のマタタンブに、2)旅人がこの実の香りで疲労が回復し、また旅に出るから、などがあります。このことから、果実に疲労回復の効果があるとされています。
 5月下旬から7月の間、山に行くと葉が白く見える植物があります。遠目には、花が咲いているのかなと思いますが、近寄ってみると、葉です。蔓性の植物”マタタビ”で、葉の下に梅のような花が咲いています。マタタビは雌雄異株で雄花の株が多いようです(写真は雄花)。9月頃には果実が大きくなり、台風が来ると果実が沢山落ちます。それを集め、強壮などを目的に薬用酒を作ります。果実に虫(ママタビミタマバエ)が寄生した”虫こぶ”を、熱湯を注ぎ虫を殺した後に乾燥したものを、薬用で”木天蓼(もくてんりょう)”といいます。薬用酒(木天蓼酒)として冷え性等に効果があると言われています。
 マタタビには猫科の動物を陶酔させる物質が入っています。陶酔させる誘引活性成分の総称名をマタタビラクトン(右の構造式: nepetalactone(ネペタラクトン)等の混合物)と言います。これは揮発性の化合物で、ライオンに嗅がせても、よだれを垂らし、転がり回ります。マタタビの仲間には、サルナシ,キューイーフルーツがあります。  蔓を焼酎漬けにしても、果実と同じような効果があると言われていますが、余り蔓を切ると植物が弱るので、楽をしないで少し高いところの、蔓の先の方を切って用いて下さい。
 長楕円形の果実(左マタタビ、右サルナシ)が熟れると甘みがあり美味しいですが、未熟果実は、唐辛子のように辛いので、用心して食べてみて下さい。若葉も食用にし、ワサビに似た味がします。
 この時期は、草むらにマムシがいますので、用心をして茂みに入って下さい。もし噛まれたら、なるべく早く日赤病院に連絡し、血清を注射してもらって下さい。九州には、マムシの他に”ヤマカガシ”(強心成分を含む)という小さな毒ヘビがいます、御注意下さい。ただ昨今ペットで飼っていたヘビをすてる人もいますので、どのような動物が野生化しているか分からないので困ったものです。
 先日、鹿児島県でマングースが野生化しているとのニュースがありました。ペットで飼った動物・昆虫がいらなくなったからすてるなどということはしないで下さい。きちんと一生面倒を見てやって下さい。自分が飼えなくなり、かわいそうだからとすてると、動物・昆虫も悲劇ですし、自然の生態系を大きく狂わせます。御協力をよろしくお願いします。

写真(2009年6月21日、阿蘇高森町にて)
(資料,写真・文章責任 薬学教育部附属薬用植物園
Medicinal Botany and Ethnobotany )(Molecular Evaluations of Medicinal Plants)
(薬用植物・生薬学分野)  矢原 正治(専門:薬用植物学、生薬学、漢方、民族植物学、環境保全・育種),変更日:2009.7.2)
 
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, from 8, May, 2004



 
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