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今月の薬用植物
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2008年8月

クマツヅラ(Verbena officinalis L. )
クマツヅラ科(Verbenaceae)



暑中お見舞い申し上げます

『焼ける暑さの 陽に向い 花を咲かせる ヒゴタイの花』(河童)

 毎日焼けるような暑さですが、皆さまお元気ですか。植物は、花を咲かせ、虫を集めています。園内は、朝夕、夜中まで、うるさいぐらいの蝉の声です。

 今月はクマツヅラです。多年性植物の雑草で、本州、四国、九州、沖繩、さらに中国、東南アジアに分布し、民間薬として用いられ、地上部の絞り汁を打撲に湿布薬として、また皮膚病に用いることがあるようです。中国の16世紀の本、本草綱目に、婦人病の薬として疝痛に用いると記してあります。
 クマツヅラは生薬名を馬鞭草(バベンソウ)といい、他に消炎、止血、強壮などに用い、風邪の時に解熱に用いたともあります。近頃はやりの抗酸化作用は、大変強い活性を示しました。昔、酒で煎じて痛み止めに使ったと書かれています。焼酎エキスが特に抗酸化活性が強かったですね。成分としてはカテコール基を2個含むverbascoside(右図)等のフェニルエタノール配糖体、さらにイリドイド配糖体等が分かっています。

 クマツヅラは、4年前に、沖永良部の方から、「沖永良部の民間薬草の焼酎浸けを飲んでいたら、体調がよくなった、道端に生えているヨモギみたいな植物なのだが何ですか」とデッカイ声の電話がかかってきたのを思い出します。「医者に治らないと見捨てられている」と言われた病気で、沖永良部から急きょ来られた時は、手がグローブのように腫れ上り、「指の先が壊死して短くなった」と言われました。その手は氷の様でしたが、「これ飲んだら調子が少しずつ良いので、これから温泉療法をかねて鹿児島に行きます」と言われました。安否を気遣っていたころ、一年近く経った春、急に電話があり、「車で行くからね」と言われ、びっくり。その時、握手すると、良く動くようになった温かい手をさすりながら「クマツヅラ様々だ」と言っておられました。今は元気に沖永良部でユリの栽培をされているのでしょう。元気で長生きして欲しいですね。

 暑い毎日、冷たい物の多飲、暴飲暴食を避け、食とストレスに気を付け、胃をいたわり、元気でこの夏を乗り切って下さい。
 熱帯のスコールのような雨が降ります。自然を楽しむだけでなく、自然を観察、危機管理をし、自然を甘く見ないようにして下さい。

写真(2008年7月25日、熊大薬用植物園) (資料,写真・文章責任 薬学教育部・附属薬用植物園(Medicinal Botany and Ethnobotany )(Molecular Evaluations of Medicinal Plants)
(薬用植物学分野)  矢原 正治(専門:薬用植物学、臨床生薬学、民族植物学、環境保全・育種),変更日:2008.8.1)
 
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, from 8, May, 2004



 
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