熊本大学薬学部
 
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今月の薬用植物
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2006年9月

アサ(Cannabis sativa L.)
クワ科 (Moraceae)


”『穏やかな 人の心に 空気澄み 緑おおい林に 植物の顔も似る』”(河童)

 変更が遅くなりました,8/25−9/3の間, タイのBangkok(バンコク)経由で,Bhutan(ブータン)の首都Thinphu(ティンプー)に出かけていました.”Bhutan-Japan Symposium on Conservation and Utilization of Himalayan Medicinal Resources”(ブータンー日本,伝統医学の保護と有効利用のためのシンポジウム)に参加し,どうにか責任を果たして帰ってきたところです.

 今回は,Bhutanで見かけた小型のアサです.アサは雌雄異株(写真左:雌株,中央:雄株,右:生薬の麻子仁)でクワ科の植物です.ビールのホップ,和紙の原料のコウゾ,かわいそうな植物名のママコノシリヌグイ等がクワ科です.アサの種子は”麻子仁”と言い,麻子仁丸等に用いられます.また,食用では七味唐辛子に入っています.Bhutanでは,たまに若い人が不法に使用して捕まると言っていましたが,他には利用価値は少ないようです.形が小さいので繊維を取るのにはむいていないのでしょう.
 麻子仁には,大麻にみられる ”幻覚成分”は入っていませんので,薬用,食用に用いられます.薬用としては,味:甘,性:平,腸の津液(水)を補い,乾燥便の排泄を促す,補血作用がある.中(お腹)を補い気を益す作用が有るとことから,潤腸剤として用いられています.麻子仁+杏仁(アンズの種子)で腸を潤滑にして,乾燥便を治す麻子仁丸.麻子仁+当帰で熱病による乾燥便および虚血による便秘を治す潤腸湯.他に炙甘草湯の処方等に配合されています.
 大麻(花穂)は,大麻取締法で取り締まられています.麻薬,大麻,覚せい剤,ドラッグに手を出すと,脳,神経の異常をきたすので,安易に手を出すことは絶対にしないでください.また,東南アジア,中国では持っているだけで終身刑になります.外国に行って,知らない人から物を預ったりしないことです.

 Bhutanの唯一の空港であるParo(パロ)国際空港は,世界で最も離発着が難しいとされています(標高2300m,周りを3000m位の緑の山に囲まれています).Paroから車で2時間の首都Thinphuは,標高2400mですが周りを松林に囲まれています.3000mを越してもツゲ等の大木の林があります.4000m付近でも,3mを越す木が沢山見られます.ネパールと大きく違う光景です.植物を一個採るごとに,ゴミを一個拾って来ました.Bhutanの方も一緒に拾ってくれました.私のいつもの癖ですが.
 今回はシンポジウム,移動で座っている時間が余りにも長かったので,お尻が床ずれになりました.中黄膏を塗って治しています.  


写真(アサ 2006年8月30日 Bhutanの首都Thinphuの植物園にて撮影)
(資料,写真・文章責任 薬学教育部・附属薬用植物園(Medicinal Botany and Ethnobotany )(Molecular Evaluations of Medicinal Plants)(薬用植物学研究室)
・矢原 正治,2006.9.6)
 
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, from 8, May, 2004



 
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