熊本大学薬学部
 
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今月の薬用植物
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2006年7月

ごぼう   (Arctum lappa)
きく科 (Compositae)


”『時間110 mmのスコールに カッパもびっくり 傘をさす』”(河童)

 激しい雨が時々降り、時にはすごい晴天に南国の雨期を思い浮かべる、今年の梅雨です。昔はジトジト降って憂鬱だったのですが、今年は植物の葉が雨粒で破れるような量が数十分で降ります。地球の周期で温かくなっているのかな?化石燃料の使いすぎでの温暖化かな? 大雨の前の日の6月24日(土)の快晴の朝、”阿蘇に雲海”がかかりました。
 本題に入ります。今月はゴボウです。食用にする肥大根はよく見ますが、花がこんなに綺麗だとは知らない人が多いのではないでしょうか?ヒゴタイも青紫で球状の花をつけますが、ボクチの仲間、今月のゴボウの花は、スポットライトの様な形で、濃い赤紫の可愛い花をつけます。しかし可愛いからと安易に触ると、とげ状になった萼で手を傷めることがありますので注意して下さい。
 薬用には、果実を用います。牛蒡子[ゴボウシ、別名 悪実(アクジツ)]と言い、性味は辛苦・涼、帰経は肺、胃、効能は風により発病する熱を除く、消炎消腫等を目的に、消風散、柴胡清肝湯、駆風解毒湯に配合されています。牛蒡子の抽出液には、抗真菌活性、抽出物には子宮収縮、血糖降下、Arctiin(上の構造式のArctigeninの配糖体)には強直性痙攣改善、血管拡張等の作用が見られます。癌細胞に対する細胞毒性も確認されています。民間薬としては、根を食欲増進、発汗利尿に、果実を利尿、瀉下、風邪の発熱の解熱、咳、扁桃腺炎等に、生の葉を肝臓の病気に飲用、湿疹、ただれに外用します。食用としては知られていますが、意外と薬用として使い道の多い植物ですね。
 ポリフェノールが良いと言って昨今ゴボウのアク抜きをしない牛蒡チップス等のお菓子を売っています。牛蒡はアク抜きをして料理するのが経験的な方法です。アク抜きをしないで食べると胃を痛める可能性があるからです。しかし油で揚げますとアク(ポリフェノールを含む)もマイルドに感じ、沢山食べ過ぎます。そうすると、半日位して胃が重くなってくることが多々あります。ポリフェノールはタンバク質(胃粘膜もタンパク質で出来ています)と結合し胃の機能を悪くします。カテキン入りお茶も同じかもしれません。特に多湿の梅雨の時期、そのままでも胃腸に負担がかかり、胃が重くなる人が多くなります。胃は人のエンジン、メインテナンス、無理な使用は避けましょう。正しい、楽しい食事で”強い胃にして、暑い夏を乗りきりましょう”。

 7月1日の薬用植物園薬用植物観察会は晴天のもと、20名の出席者でした。チッパーでバクチノキの材をチップにし、アンズの種子、ビワの種子を噛んだときの香りと比較しました。ベンズアルデヒドの良い香りがどれもしました。青酸配糖体の確認です。参加者にお礼まで。次は8月6日(日)です。



写真(薬用植物園、ゴボウ2006年6月17日玉東町、阿蘇6月24日菊陽町 撮影)
(資料,写真・文章責任 薬学教育部・附属薬用植物園(Medicinal Botany and Ethnobotany )(Molecular Evaluations of Medicinal Plants)(薬用植物学研究室)
・矢原 正治,2006.7.1)
 
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, from 8, May, 2004



 
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