熊本大学薬学部
 
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2003年6月

にっけい(Cinnamomum sieboldii)
くすのき科(Lauraceae)


『まけるな薬剤師ここにあり』(河童)
一般風邪薬で間質性肺炎

 一般の風邪薬で間質性肺炎がでているとの報道が有りました.薬剤師の在り方が問われています.国立大学の薬学部で,薬剤師が処方権を持っている,OTC,漢方をきちんと教えているところは少ないですね. 漢方薬の小柴胡湯で間質性肺炎が問題になり,漢方薬の副作用と騒がれたことがあります.小柴胡湯による間質性肺炎の主な原因は,患者さんの証(状態)と小柴胡湯の使い方を理解せず安易な投与が原因でした.一般の風邪薬は風邪の症状がでると,普通の人は,どのような状態の人でも飲んで良いと思って使用していると思います.使い方を間違うと間質性肺炎のように逆に悪化するのだとおもいます.ここで本当は薬剤師が活躍すべきなのですが.ーーーー.
 今月の薬用植物は,傷寒論の最初に出てくる処方”桂枝湯”の主薬の,桂皮(桂枝)の原植物で,ニッケイ(肉桂)です.熊薬100周年の植樹で,正門の西に2m位のモノを植樹したものが高さ5m強,幹まわり30cm位になって,花を咲かせています.
 今の北門が正門だったころまでの学生さんは,ケイヒ玉ケイヒ水などを楽しみに夏祭りの屋台へ行かれたのではないでしょうか.復活して水前寺公園のお土産やさん等に置いてあります.
 ニッケイの原産地は,中国南部のようです.ケイヒは,ベトナム,中国南部の山中で栽培されています.生薬名を,肉桂(rougui),桂皮,桂枝等と言います.桂皮の原植物は,局方では, Cinnamomium cassia又はその同属植物です.桂皮は,樹皮又は周皮の一部を除いたもので,日本では生産されていません.輸入量は約2300t,その内約10%が薬用です.残りは食品に用いられています.桂皮は品質により200段階以上に分類されています.薬用に用いられるのは,中の上位のものがおおいようです.
 桂皮には,精油[cinnamic aldehyde(桂皮アルデヒド), methoxycinnamic aldehyde, cinnamyl acetateなど],ジテルペノイド,タンニン[(−)-epicatechin, procyanidin類, cinnamtannin類など]等が含まれています.その内,渋いことで知られているタンニンですが,桂皮には甘いタンニンが含まれています.上の構造式の Cinnamtannin B1は砂糖の約100倍(重さ比)の甘味が有ります.20年前,Cinnamtannin B1を単離した本人が間違って口にして,信じれなくて,私になめて下さいと言って持ってきた思い出があります.桂皮が甘いのは,Cinnamtannin B1, D1と砂糖等の糖によるものです.
   桂皮は,漢方で,性味は辛甘,温.帰経は膀胱,心,肺.効能は発表し解肌,上衝した気をさげる.温補するなどで,桂枝湯,五苓散など多くの処方(一般用漢方処方210処方中64処方)に配合されています.
 日本でも西表島で栽培が試みられましたが,余り大きくなりませんでした.今もその木は残っているかもしれません.桂林から山ノ中に入った田舎では,家の横に,Cinnamum属の木が一本植えられていました.ネパールでは確認していないので,今度行ったときに聞いてみます.イライラした時シナモンティー,牛乳(Ca)を混ぜたもので落ち着くかも??.試していませんが.
   6月は梅と雨(梅雨)の時期,構内でも梅が熟れて歩道に落ちてます.熟した梅は甘酸っぱくておいしいです.熊本市内では,これから一ヶ月蒸し暑い日が続きます.今年もクーラー無しで夏を乗り越せるかな.冬の風邪,春の温病(ウンビョウ)を乗り越した皆様,夏の暑病(しょびょう)にお気をつけ下さい.余り冷たいモノばかりを飲食するとかかります.6月に疲れをためると夏バテするよ.疲労とストレスは溜めないようにしましょう.

SARSに中医学治療 を紹介します.今だかって,安全宣言がでないところみると,中医学の薬では特効薬はないのかな??

写真2003年5月7日(熊薬構内正門西にて)撮影
(資料,写真・文章責任 薬学教育部・付属薬用植物園(Medicinal Botany and Ethnobotany )(Molecular Evaluations of Medicinal Plants),・矢原 正治,2003.5.31)

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