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2001年10月

とうごま(Ricinus communis L.)
とうだいぐさ科(Euphorbiaceae)


 近年,平和,飽食のせいで,女性の痩せたい願望が強いためか,新聞の広告等に簡単に痩せられるというたい文句で,植物由来の飲み物が多く掲載されている.痩せる最も手っ取り早いのが下剤である.お腹の中のものを水分とともに排泄し,吸収されるものを無くすことで,体内の脂肪を燃焼することができ,痩せることは確実であるが,多くのリスクが伴う.
 便秘の場合,下剤を用いることが多いが,頑固な便秘で,出口で詰まったものに小腸性又は大腸性の下剤を与えると,お腹が痛いだけでひどい目に遭うこともある.今月紹介するのは,小腸性下剤に分類される,ヒマシ油の原植物のトウゴマである.トウゴマの種子を搾って作る油(脂肪油)をヒマシ油という.種子は,トウゴマ,ヒマシといい,やはり下剤に用いるが,脂肪油(ヒマシ油)の他に,アルカロイドのricinine(構造式),有毒タンパク質の ricin等を含むので,種子の生食はしてはいけない.外用で,ヒガンバナの球根と,ヒマシの種子(外の殻を取去る)を1:1量混ぜ,スリ鉢でつぶし,”足の裏”に貼り付ける(直接ではなく,ガ−ゼを2枚ほど間にいれ貼る).膝に水が溜まったときに用いると著効があり,民間療法で用いられる.まだ,ヒガンバナは地上部が残っているので,今のうちに移植しておくのも良いだろう.ただし,足を冷やすので,冷性の人,冬場は注意.

 ”ちなみに,漢方では桃核承気湯などの下腹部の血の巡りを良くし暖め瀉下作用の有る処方が用いられる”  トウゴマと同じ仲間に,ハズ(巴豆)という植物がある,この植物は大変な下剤である.20年前,某県警から,健康食品の分析の依頼があった.痩せたいという願望はかなえられたが,下痢が止まらないとのこと,巴豆の成分を分析して結果を返したのを思い出す.また,ブラジルのパンタナ−ルでみたハズの仲間の毒々しい真っ赤な色が忘れられない.他に,アロエ,コロシントウリ等も下剤に用いる.近ごろは痩せ薬のなかに,センナの茎,根を入れた悪質なものが出回っている.続けて飲むと下痢が止まらなくなることがある.このようなときは最寄りの薬局にご相談下さい.簡単なことでも相談できる”かかりつけ薬局”をつくっておかれると便利です.地方行政の方々も,もっと毅然とした態度で,”使用する人のことを考え”て,きちんと取り締まるべきだと思う.多くの健康食品が氾濫し,鶴屋デパ−ト等の野菜屋にも多くの外国からの野菜・果物が並んでいる.食品によるアレルギ−が心配である.今食べている人にはほとんどアレルギ−症状は出ないと思うが,小学生位から食べだし,その人達が10年以後に生んだ子供達にアレルギ−症状が増えるので心配である.
 飽食の時代も終りかもしれない.食品自給率が50%を切っている日本にどれだけの危機管理感が存在するのだろうか? 平和も危うい? 人間は特に♂は戦いを好む性格が有る.嫌な時代にならないことを祈るだけである.”倫理””道徳”はやはり必要と思うが,皆様の御意見は? 環境ISO14001を取得したのをきっかけに環境倫理を勉強して,学生さんに教えたいと思っている.


(資料:写真提供 薬学研究科・分子機能薬学専攻・創薬基盤分子設計学講座・矢原 正治,2001.10.2)

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