熊本大学薬学部
 
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2001年7月

ほそばおけら(Atractulodes lancae DC.)
きく科(Compositae)


 白い可憐な花を秋につける.中国原産で,我国産のオケラによく似ているが,葉が細い.江戸中期に渡来したようである.日本には雌株しか無いと言われているので,株分けによって繁殖する.今は小さな花芽を準備し,9月の開花を待っている.生薬としては根茎を用いる.生薬名を蒼朮(ソウジュツ),オケラの根茎は白朮(ビャクジュツ)と言う.日本薬局方13局(この4月から14局)から白朮にオオバナオケラ(Atractylodes ovata 唐白朮)が入れられた.成分としては,hinesol, β-eudesmol (atractylolは,主にhinesol, β-eudesmolの混合物), atractylodin等が蒼朮特異なもので,白朮にはatractylon等が有り,成分で化学的に分類する.処方集を見ると朮としか書いていないものがある.さあどちらを使うのかと考えたくなる.例えば,五苓散は(沢瀉,茯苓,猪苓,桂枝,朮)である.講義で使っている本には蒼朮となっている.別の処方集には白朮と記してある.教科書にはこう書いてあるが,普通は五苓散には白朮であるが,ひどい胃腸炎での下痢には蒼朮の入った五苓散が良いようだ.温盛な実証の人の利水,発汗に蒼朮,脾弱の虚証の人の利水,止汗に白朮を用いることが多いようである.(間違っていたら御意見を下さい.メ−ルアドレス(yaharas1@gpo.kumamoto-u.ac.jp)
漢方薬の使用は難しい,実際に患者さんの体質,病状と処方の効き具合を見ながらなすべきだろうが,今の大学での私にはいろいろな意味で限界がある.

 5月の旧カリキュラム薬物設計学(現・創薬基盤分子設計学講座担当)の実習が終わったと思ったら,現在は,2年生の新カリキュラム情報科学系実習である.もともと集団指導体制でやることになっていたので,講師陣を募ったが,プログラミング経験があるはずの先生方はお出ましにならない.また,分子機能専攻の大学院に所属する学生の出席もほとんど無く,後期からの3ヶ月の実習が思いやられる.講師スタッフは,吉武先生,石塚先生及び原野先生等,それに分子機能専攻の大学院生数人等である.
 新カリ(今の2年から)の1年生は,情報リテラシ−の講義のお陰か,3年生よりも早くプログラムを作り,さすがに若いと敬服するかぎりです.普通パソコンは,文書書き,デ−タの整理,学会の発表スライド作成位だろうか? 機械のブラックボックスが多すぎ,業者の思うつぼである.○○大学の入試ミスもプログラムミスが原因とのことである.コンピュ−タは困ったときの神頼みにならないものか? 私は2年生の学生さんに逆に教えてもらっている今回の実習である.

 5月末から庭に,ムラサキが咲いている.11年12月のセイヨウムラサキと似ているが,花全体が白い.小さいが綺麗な花である.朮のことで御助言をいただいた方が”昔はね,帯山の台地にあったんだよね,小学校の校庭のすみに咲いてたよ”とムラサキの話をすると言われる.人間はいくつの植物,動物,微生物を滅ぼしてきたのかなと感じる.無菌社会の日本,しかし木の下の枯れ葉を踏んづけると数万の生き物が足の下にいることに気がついてほしい.その生物がいないと,落ち葉は土には戻らない.微生物がいないと人間は生きていけないのだが.私どもは良い子になり過ぎなのではないだろうか?

(資料:写真提供 薬学研究科・分子機能薬学専攻・創薬基盤分子設計学講座・矢原正治,2001.6.30)

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