熊本大学薬学部
 
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2001年3月

ねこやなぎ(Salix gracilistyla
やなぎ科(Salicaceae)


 陽射しが柔らかくなってきた.庭の片隅に昔花卉で買って地にさしたネコヤナギが、白い綿帽子のような暖かそうな蕾のなかに雄蕊を長くのばした花を咲かせている.花が終り種子が熟すと綿のようになり風に吹かれて大空へ舞い上がる.タコのように糸をお尻から延ばし舞い上がるクモの巣立ちと同じ時期である.柳属(Salix属)は古くから薬用として、樹皮、葉を解熱、下痢止め、利尿に用いる.成分はサリシン、タンニン類等である.特に頭の痛いときに、樹皮をはぎ、たたいて柔らかくして頭に置く民間療法があった.鎮痛作用を持つサリシン(salicin)からサリチル酸が、そしてアスピリンが生まれ、100年以上を経た現在でも重要な薬として用いられる.アスピリン(現在15歳以下には処方できない)のお世話になった人は多いはずである.また生け花でもアスピリンの抗菌性を利用し、夏場に花瓶の水が腐らないように少し入れると花が長持ちする.

 サリチル酸にも鎮痛作用は有るが、皮膚浸透性が強く、飲むと胃潰瘍をおこす.現在は,角質溶解剤あるいは水虫等の治療薬として外用薬に配合される.
 庭には他に、オウレンの花の中にはすでに種子が出来ている.また、フクジュソウは太陽が当たるとパノラマアンテナのように花を開く.サクランボサクランボの蕾もピンクになってきた.ホトケノザナズナが足下で咲いている.トリカブトハシリドコロホソバオケラシャクヤクシランゲンノショウコも芽を出し、葉が大きくなっている.ほのかにジンチョウゲの香りが漂っている.
 山菜取りの時期、トリカブトとゲンノショウコ、ニリンソウの葉が似ている.バイケイソウとギボウシの芽など春は野草による中毒が多い.注意しながら採取すべきである.野草は1)注意して採取する、2)取りすぎない(種の保存)ことである.知らない間柄でもお互い注意をしあうことが大切である.
 携帯電話が主流になり、講義中でもメ−ルで遊んでいる学生もいる.二人の世界もたまには良いが、人間は多くの仲間(人)、動物、植物がいて心が休まる.それを育ててくれる太陽(光sun)、空気(air)、水(water)、土(soil)が必要であことを再確認する時期が「春」である.生命に必要な、光、空気、水、土を人間をだめにしている(便利だ、金になる等で・・).ITで目の前の画像を瞬時に世界中に送ることが出来る時代でもある.ただ、足元の熊本の自然[阿蘇、脊梁(セキリョウ)の山々から、台地、平野を通り有明、不知火の海へ天草へ]の草木、動物、微生物、土、水を大事にし、山から海へ、海から山へ、ITを用いた連携を生かし一人一人が自然と対話し考える時代に来ているのではないだろうか.自然の力を感じる春である.
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