熊本大学薬学部
 
  トップページ / 今月の薬用植物 / バックナンバー一覧 / バックナンバー
ワード検索
今月の薬用植物 今月の薬用植物トップ
バックナンバー薬用植物園

2000年12月

ゴシュユ(Evodia rutaecarpa)
ミカン科(Rutaceae)


 花は8月−9月に咲く、今は実が赤く色づき、花の無いこの時期を山茶花(サザン カ)とともに彩っている.eu(よい)+ oidia(香)というギリシャ語から由来し たEvodiaという学名を持つ植物で、木の近くを通るとミカン科特有の精油の強い香り がする.果実は強烈に辛い.成分はevodiamine等のアルカロイド.果実を呉茱萸と言 い、鎮痛、利尿、健胃等の目的で用いる.中国の長江流域から南に分布する.日本で は、奈良県で栽培され、その株が熊本県矢部町近郷(目丸村など)に持ち込まれ、5 年ほど前まで出荷された(日本最後の生産地である).現在では田んぼの畔の隅に寂 しく実を付ける.農家の人は”タバコ銭にもならん”と放置状態である.昔、ゴシュ ユの葉は野菜の苗を食う幼虫の防除に、根元に巻いていた.全て20世紀の過去の話 である.
 続く21世紀、日本での生薬の原植物の栽培はどうなるのか.日本が漢方薬、中医 学を全面的に廃止したのが明治になってすぐ.それから130年余り本当の中医学は 置き去りにされ、今日まで来ているようだ.大学の生薬学では、天然物化学が主流で あり、薬草園の存続すら危ぶまれ、栽培、分類学、形態学等は学問では無いとまで言 われる.受け継ぐ人もいず、貴重な資料は保管が悪く、またデ−タベ−ス化されても いない.そんな中、日本の生薬学の分野でも遺伝子をいじるが、本格的に解析までに は至っていない.ゲノム創薬などほど遠い.ただ、研究とは別に、中医薬は薬として 一層重要視される世紀になることは確かである.薬膳ともてはやされ、中華料理を食 べに行く日本人.自分たちが1000年以上かけて築いた、食の文化、住の文化、居 の文化を捨てようとしているのか.近くで出来る穀類、野菜、果物、肉、魚を食する ことが基本である.遺伝子もそれを知っているのであまり抵抗はしない.
 交配で美味しい米を作った.米のアレルギ−など考えたことが無かったろう.コシ ヒカリが出来て25年ぐらいになる.子供にコシヒカリ系の米に対するアレルギ−が 増えている.農薬は、農業生産を飛躍的に上げた、(小学生のころパラチオンの怖さ を知った)しかし、数十年後にしっぺ返しが来た.遺伝子組み換え食品のしっぺ返し も同じサイクルか?人間は同じ間違いを繰り返し、その被害は拡大している.最先端 の研究と自己満足し、地球を破壊する.壊れても分からないのだろうか?考える動物 ホモサピエンス.
21世紀のスタ−トラインにつく月、次の100年が地球にとって素晴らしい世紀 で、更に次の22世紀に繋げるように、各人が自分の出来る範囲を一歩づつ前進し努 力すべきである. ”一粒の麦”から栄えたメソポタミア文化はこの麦で滅びた.生命には良い水、良い 土地、良い空気が必要である.太陽の恵みを受けながら.


(資料:写真提供 薬品資源学講座・矢原正治,2000/11)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

トップページへ戻る


 
当ウェブサイトの著作権は、熊本大学薬学部に属します。 掲載内容および画像などの無断転載を禁止します。
熊本大学ホームページへ 医学薬学研究部へ サイト案内