熊本大学薬学部
 
  トップページ / 今月の薬用植物 / バックナンバー一覧 / バックナンバー
ワード検索
今月の薬用植物 今月の薬用植物トップ
バックナンバー薬用植物園

2000年5月

くず Pueraria lobata
まめ科 Leguminosae

 濃い紫色の花を8月終りから9月初旬にかけてつける蔓性植物である(写真上).根はイノシシの大好物で,太さが人間の太股以上のものもある.熊本では五木でクズ澱粉を製っていた(写真,クズの根の粉砕).クズという名前のように,大変な繁殖力を持つ.中国の砂漠化する地にクズを植えて緑化する計画もあった.アメリカには日本からクズが帰化し繁茂している.セイタカアワダチソウのお返しのような草である.
 暑くなるとクズ粉,クズ餅,クズ切りなど涼しくあっさりした食べ物が美味しく感じる.葛粉は根の澱粉を奇麗な湧き水で50回ぐらいさらして作る.輝く宝石のような澱粉ができあがる.美味い! 秋にはくずの蔓でカゴを作ったり,クリスマスのリ−スを作るのも楽しみだ.昔は蔓を材料に葛布を作り着物にした.また,馬が葉を喜んで食べることより,ウマノボタモチ,ウマノオコワなどの地方名がある.日本人の生活の中で地上部,地下部が衣食住,そして医薬として身近な植物である.
 薬用としては,根を葛根といい,発表解肌,解熱,鎮痙などの目的で風邪の初期に用いる葛根湯に配合される.花は葛花といい,二日酔いの民間薬として,日本,台湾などで用いられている.乾燥した花を酒宴の前に飲んでおくと,酒に酔いにくいし,二日酔いも少ない.二日酔いをしやすい人には,私は漢方薬の黄連解毒湯と五苓散を飲むことを進めている.昨年,薬草園の方が白花のクズを採取して来られた(写真下)
 成分としてはサポニン(kudzusaponin-A1, -A2など)とフラボノイド(daidzein, daidzin, genisteinなど)が含まれる(図). 中国の広東省,広西省,雲南省等に行くと,葛薯(クズイモ)という野菜を夏になると美味しそうにおやつに食べている.水気が多く,繊維質で,美容食としては持ってこいである.成分は澱粉が主だが,葛と同じようなサポニン,フラボノイドが入っていた.タイ産で女性の胸が大きくなるといって一時期ブ−ムになった,プエラリア ミリフィカ(Pueraria minifica)は同属の植物であり,似たような成分が入っているが毒性があることが判っている.余談だが,ザクロの果実の種子の中には女性ホルモンが含くまれている.人間の欲望に男性は一生髪の毛が黒くふさふさで,女性は胸が豊満であることであろうか?

 人間は生命を殺して生きている,地球の自然を壊すことしかでにない.恐竜と同じ運命だけはたどりたくないのだが.地球を捨てて他の星に移住する日が来ないことを祈る.
 熊本大学薬学部は,今年度から環境ISO14001の取得に向けて行動を始めた.来年の今ごろは大江キャンパスで生活する学生,教職員が,環境に対し一層考え・行動できるようになっていることを楽しみにしている.


(資料・写真提供 薬品資源学講座・矢原正治,2000/4)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

トップページへ戻る


 
当ウェブサイトの著作権は、熊本大学薬学部に属します。 掲載内容および画像などの無断転載を禁止します。
熊本大学ホームページへ 医学薬学研究部へ サイト案内