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1999年12月

せいようむらさき (Lithospermum officinale)
むらさき科 (Boraginaceae)

 写真はセイヨウムラサキであり,園芸種などとして導入されている.日本にはムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)が自生する.熊大薬草園は夏場土地が焼けるために,ムラサキはほとんど栽培できず,セイヨウムラサキを標本としていたが,これでも数年で枯れてしまった.現在は姿すらない.
 紫,昔から高貴な色として愛されてきた.染料として,また,薬用として用いられた.昔は熊本市内の帯山から東の丘陵に自生していたと聞く.「小学校の校庭にも沢山有りましたよ」とお年寄りの話.今は昔話となった危急種に指定されている植物である. ムラサキの根は組織培養され,得られたshikonin等の色素を用いた口紅が発売された.根を生薬名で紫根という.ナフトキノン系の紫色色素のshikonin, acetylshikonin等を含む.構造中のアルコ−ル水酸基が新陳代謝で酸化還元を調整し,創傷,火傷の傷口の新生をうながすといわれる.他に抗炎症,殺菌,抗腫瘍作用,解熱,解毒,消炎などが認められている.皮膚炎,湿疹,凍傷,火傷,切傷などに外用薬として用いられる.ムラサキから由来する紫根を”硬紫根”という.中国産はほとんどが”軟紫根”であり,基源植物はMacrotomia euchroma (=Lithospermum euchroma)である

 紫根の入った有名な薬に”紫雲膏”がある.火傷の良薬である.熊薬2年生の生薬学の学生実習で一生懸命に作っている.2年生から始まる実習の最初の「安全に関する講義」で,ガラス細工で焼けたガラスを握りジュ−と音がすることがあると言うと笑いが出る.しかし,実際にガラス細工実習で約半数が火傷をして,紫雲膏のお世話になっている.塗ると痛みも少なく治癒も早く奇麗に治ると自分の身をもって体験しているようだ.

[紫雲膏の作り方(実習での処方)][紫雲膏の作り方(実習での処方)]胡麻油25ml,当帰,紫根各2g,蜜蝋 5g,豚脂0.5g.胡麻油をビ−カ−に入れ140℃,約1時間加熱し,蜜蝋,豚脂を加え20分140℃で加熱する当帰をガ−ゼで包み加え,140℃,20分抽出する.つぎに,紫根をガ−ゼで包み140℃,15分抽出する.紫根を引き上げた後,冷やし,容器に移す.1/3量提出.

[笑い話?]先々週の実習中,紫雲膏を作っている最中に目の前でビ−カ−が転びそうになった.慌てて手を出したものだから,人差指全体に110℃の油がかかった.幸い,紫雲膏を調製し,最後に冷やしているところであり,かかったのは熱い紫雲膏であった.火傷はしたがひどくはならず,次の朝にはほとんど直っていた.さすがに紫雲膏だとの実体験である.(1999.12.1記)

来年もよろしくお願いします.

(資料・写真提供 薬品資源学講座・矢原正治,99/11)

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