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1999年11月

ひがんばな (Lycoris radiata)
ゆり科 (Lyliaceae)

 マンジュシャゲなど1000以上の里呼び名(方言)をもち日本人の心をとらえ親しまれている花である.彼岸の時期,稲穂が黄金色に波打つ水田や村外れの土手にかがり火を連ねた様な真紅の花をつける.植物体内に時計でもあるかのように決まった時期に花を咲かせる.熊本も9月は記録的な猛暑であったが,やはり彼岸の時期(9月中旬)に花を咲かせた.特に菊鹿町では土手一面に咲く.花が終ると葉が出てくる.葉は翌年の田植えが始まる前まであり,夏には地上部は無くなる.日本のひがんばなは染色体が3倍体(3n=33)であり,種子はできず,球根により栄養繁殖をする.近年,白花,黄色花のヒガンバナが中国より入り,赤花の中に混じって咲いている.
 薬用としては球根を用いる.民間療法でヒガンバナの球根とトウゴマ(ヒマシ)の種子(果皮は除く)を当量混ぜすりつぶしたものを,足の裏に貼ると(ガ−ゼを置いて貼る)膝(ヒザ)に水が溜まったのを治すことが出来る.但し,足先が冷えるので,冷え性の強い人には向かない.また,直接膝に貼るとかぶれることが多い.
 弥生時代に救荒植物として大陸から持ち込まれたとの説が強い.

球根にはアルカロイド(licorine,1895年に単離)を含み有毒である.
水で良くさらせば良質のデンプンが得られ食用にできる.デンプンを顕微鏡で見ると奇麗である.きらきらと輝き宝石のよう見える.これにヨウドチンキをたらすと,ヨウ素デンプン反応で,青色に染まる.カタクリのデンプンは貝殻のような線がある.米はサッカーボールの模状,サツマイモは大きくおヘソがある.トウモロコシはサツマイモのデンプンの1/10位の大きさでやはりヘソがある.ジャガイモは山のように等高線がびっしりと見える.一度市販のかたくり粉がどのデンプンで作られているかを見てみるのも面白いと思う.

 近頃,遺伝子組み換えの穀物が増えてきている,トウモロコシ,大豆.2003年位には小麦と.トウモロコシのデンプンはビ−ル等いろんなところで使われているが表示はされていない.話は少し飛ぶが米によるアレルギ−の人が多くなっている.原因が分かりつつある,現在流通の主流となっているコシヒカリ系などを食べると症状が出る.しかし,コシヒカリを作るために交雑した家系をたどり,その家系に入っていない品種で,地方で細々と作られている米ではアレルギ−は出ない.これと同じように,病気,害虫に強い遺伝子を埋め込まれた遺伝子組み換え作物は,人類,ひいては生態系に対し何らかの影響をあたえることが懸念される.結果が出るのは次世代,次々世代であろう.ただ,この50年で倍に膨れ上がり60億を越えた人類の餓えと飽食を救うにはこの方法しかないのだろうか?科学は人類を救えるのか?滅ぼすのか?使う人間の心がけ次第に思える.過信は禁物である.
 台風18号(9/24早朝)で折れてしまったため,写真は北里大学薬草園で撮影(10/2)


(資料・写真提供 薬品資源学講座・矢原正治,99/10)
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