春先の新芽が吹く頃,どこともなく,かぐわしい匂いが漂ってくる.クサギの仲間は,名前の通り,臭木であり,特異な臭気が有り,一度嗅ぐと忘れられない.しかし,花は香りが良く,7−9月にかけて咲く.
”匂いに迷うべからず,若葉を使って,油炒めに挑戦”と言われた元薬用植物園の故濱田先生の言葉に有るように,クサギの若葉を水洗いし,良く水を切り,油で炒め,味付けするとたいへん美味しい.また,煮付けなどにも良い.薬用としても用いられ,クサギは生薬名を臭悟恫と言い,葉,小枝を高血圧,下痢,リュウマチに,1日10−15gを煎じて飲む.痔,はれ物には,煎じ汁で患部を洗うとよい.ボタンクサギは中国原産で,生薬名,臭牡丹と言う.自分をみんなに示すための匂いであり,昆虫,動物を誘引,又は,逆に防御するものでもあるのかも知れない.春先はいやな匂いでも,夏の花はたいへん人の心を落ち着かせてくれる植物である.
(97/7 生薬学研究室 矢原)
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