熊本大学
大学院生命科学研究部
環境分子保健学分野

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研究内容

高次脳機能障害の治療薬の開発

 本分野では、非麻薬性中枢性鎮咳薬の作用メカニズムを単一ニューロンレベルで解明する過程で、これらがすべてGIRKチャネル活性化電流を抑制することを見出した。GIRKチャネルは、 静止膜電位の形成と維持、K+ホメオスタシス、シナプス抑制や活動電位発火頻度の決定などに関わる内向き整流性K+チャネルの一種で、中枢神経系に広く分布している。このチャネルは、5-HT1A、ドパミンD2やオピオイド受容体など種々のGiタンパク質共役型受容体とカップルすることが明らかにされており、中枢神経系の機能の発現に重要な役割を演じていると推測されている。我々は最近、このGIRKチャネルを抑制する非麻薬性中枢性鎮咳薬が、鎮咳有効量という薬用量で、多彩な薬理作用を発揮することを、動物実験レベルで初めて明らかにしている。 具体的には、以下の通りである。

• ADHD(注意欠陥/多動性障害) 【特許 5109132】
• 治療抵抗性うつ病 【特許 5266520】
• 統合失調症 【特開 2013-063958】
• パーキンソン様症状 【特開 2011-246446】
• 強迫性障害 【特開 2012-062272】
• 疼痛 【特願 2011-47004】
• 環境化学物質の胎児期低用量曝露による学習障害などの脳機能障害 【特許 5135619】

 我々は、現在、これらの非麻薬性中枢性鎮咳薬の多彩な薬理作用にGIRKチャネルが如何に関与するのか、さらにGIRKチャネルの生物学的意義は何かなど、 GIRKチャネルに関する種々の検討課題を明らかにするため、共同研究を展開中であり、GIRKチャネル研究を通じて、新たな脳機能障害改善薬の開発を目指している。さらに我々は最近、上述した環境化学物質の胎児期低用量曝露による脳機能障害もエンリッチ環境飼育で改善することを報告している(Neuroscience (2010))。このことから、我々は、GIRKチャネルを抑制する非麻薬性中枢性鎮咳薬とエンリッチ環境の両者に共通した作用機序を解明することで、新たなジャンルの高次脳機能改善薬を開発できるのではないかと考えている。将来的には、脳(高次脳・脳幹)機能の障害を改善する万能薬、アスベリンを超える夢の新薬の開発を目指している。

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