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熊本大学
大学院生命科学研究部
環境分子保健学分野

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研究内容

HIV-1 p2 peptideは電子伝達系複合体IV (CcO)に対してポジティブ・アロステリック・モジュレーターとして機能する。

 ウイルス性因子p2 peptideがCcOを構成するMT-CO1にアロステリックに結合し、結果的にATP産生効率を上昇させることをはじめて明らかにした (Fig. 1, Retrovirology (2015), 12:97, DOI: 10.1186/s12977-015-0224-y; URL: http://www.retrovirology.com/content/12/1/97)。p2 peptideはミトコンドリア膜間スペースに露出したMT-CO1の構造的にポケット状になった部分に相互作用できることが示唆されており(Fig. 2A丸部分, Fig. 2Bは、Fig. 2Aを斜めから見た図)、細胞から取り出したミトコンドリアに直接p2 peptideを加えて、CcOの活性が上昇することを明らかにしている。これまでウシ心筋由来CcOの高次構造が日本人研究者によって解き明かされており、CcOは13個のサブニットによって構成されていることが明らかになっている (Science (1995) 269, 1069; (1996) 272, 1136)。その発見から20年後にCcOの正のアロステリックモジュレーターが発見されたことは興味深い。ヒトとウシ間でのMT-CO1の91.05%の相同性を考慮しながら、p2 peptideを介したCcOの遷移状態制御機構の解明に努めることで、HIVが宿主のエネルギー産生系を巧みに利用している戦略を絶つことによって、独創的な抗HIV治療戦略を提案できるのではないかと考えている。さらに、CcOのプロトンポンプ機構の解明は、生体エネルギー論分野で最も重要な研究領域の一つであることから、外的要因によってCcOの活性が調節されるという今回の知見をうまく活用できれば、いまだ十分には解明されていない電子伝達系の仕組みを明らかにできるかもしれない。また、本研究は、エネルギー産生に問題のある糖尿病や癌、神経変性疾患、難病指定されているミトコンドリア病といった疾患の治療法開発にも繋がる可能性があると信じたい。

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