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社会のためになることって・・・大学の社会貢献、ということが強く求められる昨今である。研究成果を活かしてベンチャー企業を立ち上げたり、市民講演会・講座を開いたり、と研究の延長線上に持ってくることが多いし、大学としてもそれを奨励しているようである。研究費使って研究しているんだから、社会に還元しろ、ということなのかもしれない。 だが、私の行っていることは、研究とは直接関係ない。 私は、熊本県薬剤師会と協力して、保険薬局の備蓄医薬品検索オンラインデータベースを構築している。2000年から続けているこの事業は、従来紙媒体で配られて薬局間の医薬品のやりとりに利用されていた備蓄医薬品リストをネット上で検索可能なものとすることから始まった。 医薬分業が広まり、保険薬局がさまざまな医療機関の処方箋を取り扱うようになると、自薬局の在庫医薬品だけでは対応できないことが多くなる。足りない分を買うにしても、箱買いだと余りがデッドストックとなるリスクもあるため、在庫持っている薬局から小分けしてもらうのであるが、このとき“どこの薬局に在庫あるか?”が分からないと困るわけである。 紙媒体のリストでは、手間も金もかかるし、そもそも情報の更新が難しいため、データとしては使い物にならないことが多く、全国どこの薬剤師会でもさまざまな対処を始めた時期に、偶然私は話を聞いたわけである。 以前から、研究室の試薬管理にオンラインデータベースを用いていたので、その技術を流用してシステムを試作し、実際にシステムを使用する薬剤師の方々と検討を重ね、現在のシステムに至っている。 本システムの特徴は、データ収集のための“人のつながり”であり、決して金にものを言わせたハイテクではない。インターネットを使い、コンピュータを使ってはいるが、メインとなっているのはヒューマンネットワークである。熊本県薬剤師会の各支部の担当者の皆様と連絡を取り合いながら、情報のやりとりを行っている。 現在では、単なる備蓄医薬品検索システムではなく、添付文書データ(これは熊本大学総合情報基盤センター、医学部と協力して独自構築している)とのリンクや、ジェネリック医薬品検索システムとしても機能しており、情報収集システムは日本薬剤師会DEM事業に効率的に利用され、熊本方式として注目されているところである。 情報の性質上、熊本県薬剤師会会員のみへの公開となっているが、デモ版システムは公開しているし、薬局備蓄情報を抜いた“ジェネリック医薬品検索データベース”も一般公開している。 研究で利用していたシステムを流用したものであるし、情報処理学を教えている立場であるから、私としては別に違和感のない活動なのであるが、研究成果による社会への還元、などとはこれっぽっちも思っていない。 薬剤師のみなさんが効率良く活動するための手助けをするのは、薬学部に所属する教官としては当然のことと思っているだけである。 |