松永浩文准教授らの研究成果がOrganic & Biomolecular Chemistry(表紙採用)に掲載されました!

 医農薬品をはじめとする様々な有機化合物を目的どおりに収率よく合成する方法の開発は効率性・経済性や廃棄物削減等の観点から非常に重要です。有機合成反応ではそれらを達成するために「触媒」をよく利用しますが、近年では空気中での安定性や安全性の観点から有機化合物そのものを触媒として利用する「有機触媒」の研究開発が、「金属触媒」と同じく盛んに行われています。

 熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)・創薬基盤分子設計学分野の松永浩文准教授、石塚忠男教授、安藤眞助教らは、「堅い」二環系構造により配座が固定された1,2-ジアミン母核と「柔らかい」直鎖状リンカーを組み合わせた新しいタイプの有機化合物群を設計・合成し、これらが有機触媒として、代表的な有機分子構築反応において、リンカーの導入位置の違いで生成する化合物の「立体が逆転する」(我々の右手と左手の様な関係の化合物を作り分けることができる)事、更には、一般的な有機触媒反応では大量の触媒量(原料に対して1/3〜1/20)が必要とされるなか、今回開発した化合物は反応原料に対してわずか2000分の1の量で目的の反応が収率よく進行する事を、それぞれ明らかにしました。

 本研究成果は英国王立化学会誌「Organic & Biomolecular Chemistry」4月14日号に発表されるとともに、本号の表紙にも採用されました。

Organic & Biomolecular Chemistry, 2017, 15, 2892 - 2896


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(表紙解説:「堅い骨格」=熊本城、「柔らかいリンカー」=天草五橋と海・阿蘇の雲海、海と山で生成物の立体逆転を、それぞれイメージしました。今回の熊本地震で我が故郷熊本、特に熊本城を始めとする熊本市近郊と阿蘇地区が甚大な被害を受け、美しい熊本の光景を何かの形で残したい、また、今回の震災に関して国内外から多大なるご支援を頂いた事へのお礼の意味も込めて、今回の表紙を作成しました)