univname
top
first
kenkyunaiyou
kenkyugyoseki
member
photo
access

toiawase

有機触媒(N-オキシド、ホスフィンオキシド等)を用いる不斉合成


 近年の触媒反応の進歩は目覚ましいものですが、有機化学で利用される触媒のほとんどは、金属と配位子から構成されています。こうした触媒には、産出量が少ない高価な貴金属や、廃棄困難な重金属がしばしば用いられています。また、錯体の安定性が低いため、厳密な反応条件を必要としたり、さらに反応後は、配位子と金属を別々に回収せざるを得ない場合がほとんどです。そこで、金属を全く使わない、純粋な有機化合物を触媒とする反応が登場しました。これは勿論、金属を使わないことから、環境への配慮という点で金属触媒反応より有利なばかりか、触媒が水や空気に安定で取り扱いやすいという利点を持ちます。近年、この領域の研究は世界中で注目され、ノーベル化学賞の受賞対象研究となりました(2021年 List & MacMillan)。
 ところで、N-オキシドやホスフィンオキシドは高い電子供与能を持つ特異な官能基です。極めて歴史の古い化合物であるにもかかわらず、これらを触媒として有機合成化学に利用した例はこれまでほとんどありませんでした。
 私たちは、独自に設計した軸不斉N-オキシドやホスフィンオキシドBINAPOが、いくつかの不斉反応における触媒あるいは配位子として有効であることを見出しました。これらの反応は、有機オキシド化合物を利用する不斉反応の初めての成功例であり、有機合成化学における有機オキシド化合物の新たな可能性を拓いたものと考えております。