ご挨拶

 平成27年4月1日付けを持って、大学院生命科学研究部(薬)薬用植物分野の教授として着任しました渡邊高志と申します。

 私は、1983年に帝京大学薬学部を卒業後、農林水産省果樹試験場の研究員として、当時の育種第一研究室の室長の元、技術指導を受けつつ、後方支援を頂き、青年海外協力隊として1984年にネパール森林土壌保全省植物資源局に赴任しました。そして約4年間の活動を終えた後、1988年に北里大学薬学部に薬用植物園に専任助手として採用され、1999年同大学に於いて、博士(薬学)の学位を取得しました。その後、JICA国際協力事業団の専門家としてブラジル連邦共和国に於いて、アマゾン産薬用植物、特に医薬品原料植物の探索研究と栽培試験に取組みました。帰国後は農医連携の科学や教育が総合大学拠点形成のために重要と考え、陽 捷行北里大学副学長(土壌学)の勧めもあり神奈川県相模原市との新都市農業推進協定に基づき、サテライトガーデン農場の開設に参画し、特殊農産物の供給拠点形成のため市民レベルでの実践農業に携わりました。そして、ブラジル連邦共和国にJICA専門家として、アマゾン川河口のベレン市に派遣された際に、アマゾン地域を中心にブラジル各地での薬用植物の探索研究に従事する経験を積んだことは、その後の自らの研究モチベーションに大きな影響を与えたことは間違い無いと思っています。

 2007年には、長らく勤めた北里大学(東京都港区白金、神奈川県相模原市)を離れ、高知県立牧野植物園・資源植物研究センターのセンター長として、植物分類研究を強化し、公立大学法人高知工科大学地域連携機構(兼、環境理工学群・教授)の室長として地域連携研究を兼務して参りました。

 高知県立牧野植物園及び高知工科大学に在職した7年間の一つの成果として、高知県有用植物ガイドブック(高知工科大学、平成27年3月刊行)にまとめることが出来ましたので、熊本県でも同県に自生する約2100種の植物を対象に同様のプロジェクトを展開したく思っています。

 現在、科学研究費・基盤研究に採択されておりますが、理想的な研究を続けるには、外部資金の獲得も重要となることを痛感しております。多くのご縁をいただき、地元企業との機能性食品共同開発講座が設置され研究も始まり、研究機運が非常に高まっております。さらなる植物産業化のため自治体との共同研究を推進する中で、研究活動が根底にある熊薬を選んでくださった留学生を含む学生らには研究と教育をバランスよく受けられる環境を整え自由な発想を画ける研究室でありたいと願っています。

 本年度より文部科学省「地(知)の拠点整備事業」も含めた将来の運営計画に沿って、現在までに熊本県内2か所に拠点を形成し、大学教育拠点として、基礎科目と専門科目に役立てられる教育・研究の場としてサテライト型のフィールドを構築したく思っています。

 「植物の力」で、熊本県をもっと豊かに!というテーマが、これから私の研究テーマの一つに加わることになります。従来の熊本県の産業構造を考えますと、私が大学卒業後間もない20代の頃赴任したネパール国が、0次産業のモデル国としての理想ではありますが、今後は植物を活用した6次産業化を目指したく思います。さて、ここで新植物産業というのは、従来の農林業とは異なる領域に新たな経済活動の領域を切り開くことを意味します。すなわち、医薬品原料や化粧品原料としての付加価値の高い植物や、ダイエットや健康増進にすぐれた機能性食品の素材となるうる植物を新たに開発し、それに関連する新規の産業連関を創出することを意味します。その経済規模がどの程度になるか、確約はできませんが、未利用植物の可能性を発見し、産業化を進めるとともに、人々を元気にしたいと思っています。

 さらに、今回の着任にあたり、薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター(旧、薬用植物園)のセンター長としての任務を兼任させて頂くこととなりました。熊本大学薬学部がある大江地区は、熊本市の中心街付近にある緑の多い地区で、同センターは、肥後細川藩の薬園"蕃滋園"(1756年開園)の流れを汲んだ、薬学部の前身である官立熊本薬学専門学校の薬草園(熊薬薬草園)として昭和2年(1927 年)に開設された大変歴史のある貴重な教育展示施設とお聞きしています。現在、その規模を約7,000m2 と拡大させ、日々、多くの薬用植物や樹木を植栽しています。今年の8月の台風では、キャンパス内の樹木類に多大な被害を受け、2名の技術職員はじめ、多くの職員の方々の協力を得て、現在復旧作業を急いでいるところです。もともと構想として準備されてきた薬学部キャンパス全体を教育・研究の場として掲げる薬草パーク構想を本格的な事業スタートの年としたく、『街角のオアシス薬用植物園・薬草パークを目指して、キャンパス内植栽区全体の改革』を目標にしまして、震災や台風にも負けない薬草パークの実現に向けて、鋭意努力していきたいと思います。

 これまでの私が目指してきた研究の骨格は、「植物資源戦略」に関する研究です。これからも本研究を発展継続させていければと思っています。熊薬着任後は、熊本大学には設置されていない農学部に代わるような農工医(薬)連携事業を強化し、新しいイノベーションを目指したく思っています。

 工学部(高知工科大学)から再び薬学部に着任し、この間の教育面でのギャップを埋めるためにも、皆様のご指導ご鞭撻を賜りますようどうぞよろしくお願い申しあげます。

薬用植物学分野・渡邊高志

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